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[R6-09] 西南日本弧東九州姫島火山群第四紀流紋岩中に含まれるザクロ石の成因
キーワード:ザクロ石、流紋岩、外来結晶、姫島火山群
一般に,火成岩中にザクロ石が存在することは希で,火山岩ではメタアルミナスな安山岩やパーアルミナスなデイサイト・流紋岩などから少数報告されている(e.g., Bach et al., 2012; Kawabata & Takafuji, 2005).日本では奈良県・大阪府の二上山,香川県の雨滝山の安山岩そして熊野酸性火成岩類等からザクロ石の含有が報告されている(Miyashiro, 1955).西南日本弧第四紀火山フロント沿いの九州東部の国東半島沖に位置する姫島火山群(Hime-shima Volcanic Group; HVG)は,デイサイトと流紋岩の溶岩からなる7つの単成火山から構成されている(e.g., Itoh, 1990). HVGの流紋岩から斑晶状のザクロ石が報告されている(Miyashiro, 1955; Itoh, 1990).このザクロ石についてMiyashiro (1955)は斑晶か外来結晶かの判断は困難であるとしたが,Itoh (1990)はこのザクロ石が自形であることから斑晶であると主張した.Miyashiro (1955)はザクロ石が泥質変成岩由来の外来結晶であっても,マグマの化学組成や物理的条件次第では,流紋岩マグマ中に安定に存在しうることを指摘している.姫島のデイサイトは高いSr/Y比と低いY濃度を示し,これをShibata et al (2014)は沈み込むスラブの部分溶融で説明した.しかし,HVGの流紋岩中のザクロ石が斑晶ならデイサイトの地球化学的特徴をザクロ石の結晶分化作用で説明できるかもしれない.そこで我々は,HVGの流紋岩中のザクロ石の記載岩石学的・地球化学的研究を行った.
我々の観察によるHVGの流紋岩の重要な記載岩石学的特徴は,斑晶状のザクロ石が半自形(城山溶岩)から他形(達磨山溶岩)を呈することであり,このことはHVGのザクロ石は自形であるというItoh (1990)の報告とは異なる.さらに,城山溶岩中の一部のザクロ石が,斜長石の集斑中で珪線石,ジルコンと共存することも記載岩石学的に重要であると考えられる.ザクロ石,斜長石,珪線石,ジルコンは全て自形性に乏しく半自形から他形を示す.ザクロ石と並び,珪線石も火成岩中に存在することは稀で,その起源は泥質変成岩からの外来結晶である可能性が指摘されている(Caffe et al., 2012; Kawabata & Takafuji, 2005).一方,姫島のデイサイト溶岩中からはザクロ石-黒雲母-珪線石-ジルコンという鉱物組み合わせを持つ泥質変成岩が捕獲岩として報告されている(Hirayama et al., 2022).このことから,城山溶岩中の鉱物は,泥質変成岩が流紋岩マグマ中に取り込まれ溶融したときの溶け残りでザクロ石が外来結晶であると考えても不自然ではない.次にザクロ石の主成分元素組成について検討する.Harangi et al (2001)は,M-, I-, S-タイプのマグマや泥質変成岩等に含まれるザクロ石の主成分元素組成を調べ,ザクロ石のCaOとMnO濃度の関係が,それぞれのマグマや岩石で異なることを示した.そこで,本研究では流紋岩中に観察されるザクロ石の主成分元素組成を分析し,火成岩や変成岩中で晶出したとされるザクロ石が示す組成との比較を行い,その起源について解析した.HVGの流紋岩中のザクロ石のCaO 濃度は 0.5 – 1.2 wt%でMnO濃度は5. 6 – 6.9 wt%であった.この組成範囲はHarangi et al. (2001)が示したM-, I-, S-タイプのマグマ中のザクロ石が示す範囲ではなく,泥質変成岩中で再結晶したザクロ石が示す組成(CaO < 3.2 wt%,MnO = 0.3 – 8.0 wt%)と調和的である.HVGの流紋岩中のザクロ石は,この組成範囲のうちMnO濃度が高い領域にプロットされる.このことと,上述の記載岩石学的特徴は,HVGの流紋岩中のザクロ石は泥質変成岩起源の外来結晶であることを強く示唆する.
我々の観察によるHVGの流紋岩の重要な記載岩石学的特徴は,斑晶状のザクロ石が半自形(城山溶岩)から他形(達磨山溶岩)を呈することであり,このことはHVGのザクロ石は自形であるというItoh (1990)の報告とは異なる.さらに,城山溶岩中の一部のザクロ石が,斜長石の集斑中で珪線石,ジルコンと共存することも記載岩石学的に重要であると考えられる.ザクロ石,斜長石,珪線石,ジルコンは全て自形性に乏しく半自形から他形を示す.ザクロ石と並び,珪線石も火成岩中に存在することは稀で,その起源は泥質変成岩からの外来結晶である可能性が指摘されている(Caffe et al., 2012; Kawabata & Takafuji, 2005).一方,姫島のデイサイト溶岩中からはザクロ石-黒雲母-珪線石-ジルコンという鉱物組み合わせを持つ泥質変成岩が捕獲岩として報告されている(Hirayama et al., 2022).このことから,城山溶岩中の鉱物は,泥質変成岩が流紋岩マグマ中に取り込まれ溶融したときの溶け残りでザクロ石が外来結晶であると考えても不自然ではない.次にザクロ石の主成分元素組成について検討する.Harangi et al (2001)は,M-, I-, S-タイプのマグマや泥質変成岩等に含まれるザクロ石の主成分元素組成を調べ,ザクロ石のCaOとMnO濃度の関係が,それぞれのマグマや岩石で異なることを示した.そこで,本研究では流紋岩中に観察されるザクロ石の主成分元素組成を分析し,火成岩や変成岩中で晶出したとされるザクロ石が示す組成との比較を行い,その起源について解析した.HVGの流紋岩中のザクロ石のCaO 濃度は 0.5 – 1.2 wt%でMnO濃度は5. 6 – 6.9 wt%であった.この組成範囲はHarangi et al. (2001)が示したM-, I-, S-タイプのマグマ中のザクロ石が示す範囲ではなく,泥質変成岩中で再結晶したザクロ石が示す組成(CaO < 3.2 wt%,MnO = 0.3 – 8.0 wt%)と調和的である.HVGの流紋岩中のザクロ石は,この組成範囲のうちMnO濃度が高い領域にプロットされる.このことと,上述の記載岩石学的特徴は,HVGの流紋岩中のザクロ石は泥質変成岩起源の外来結晶であることを強く示唆する.