一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R6:深成岩・火山岩及び サブダクションファクトリー

2024年9月14日(土) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R6-P-04] 山形県温海・鈴地域の貫入岩と地殻起源捕獲岩の岩石学的研究

*東條 壱優1、星出 隆志1 (1. 秋田大·国資)

キーワード:岩石学、捕獲岩

タイトル:山形県温海・鈴地域の安山岩類に含まれる斑れい岩質捕獲岩の特徴
東條壱優・星出隆志
山形県鶴岡市温海周辺地域には中新統鼠ヶ関層に貫入したドレライト岩床が分布している。同岩床に伴って、鶴岡市五十川・鈴~黒滝付近にデイサイト~安山岩質岩脈、鈴漁港から南方1kmの立岩にはデイサイト質溶岩ドームが分布する(土谷ほか、2003)。これら安山岩~デイサイトには斑れい岩質捕獲岩が含まれる。近藤ほか(1999)は、岩石学的特徴と同位体化学組成およびSm-Nd鉱物アイソクロン年代に基づき、同地域の斑れい岩質捕獲岩を古第三紀に活動したアルカリ岩質マグマに由来するかんらん石を含むタイプと、後期白亜紀に活動したマグマに由来するかんらん石を含まないタイプに分類し、両タイプともに新第三紀に活動した温海ドレライトやそれに伴うデイサイト~安山岩とは成因的な関係がないと考えた。一方、土谷ほか(2003)は、斜長石、普通角閃石、単斜輝石、磁鉄鉱からなる捕獲岩を下部地殻起源、かんらん石、単斜輝石、斜長石、クロムスピネルからなる捕獲岩をドレライト質マグマの集積岩であると考え、捕獲岩の母岩のデイサイトはドレライトの熱によって下部地殻が部分溶融して形成されたとしている。このように、温海地域に産する斑れい岩質捕獲岩の起源について異なる解釈がなされており、未だ検討の余地がある。そこで我々は、鈴~黒滝付近の火山岩及びドレライトの分布と、斑れい岩質捕獲岩の岩石学的特徴を調べた。鈴漁港の南南西約350 mの黒滝付近の沿岸に鼠ヶ関層泥岩と岩床(玄武岩質粗面安山岩)の接触部が露出し、玄武岩質粗面安山岩に伴ってデイサイト(SiO2=64.5 wt%)が分布している。玄武岩質粗面安山岩の露出はごく小規模で、泥岩とデイサイトの間に幅約20 cmの範囲で板状に分布する。泥岩-玄武岩質粗面安山岩あるいは玄武岩質粗面安山岩-デイサイトの両接触面の走向傾斜はいずれも泥岩の層理面とほぼ平行である。黒滝~鈴漁港までの間に分布するデイサイト~安山岩には、長径数cm~40 cmの斑れい岩質捕獲岩が含まれる。同捕獲岩約20個を採取し、岩石学的特徴に基づき以下の5種類に分類した。・中粒かんらん石斑れい岩(Pl-poorタイプ: SiO2=50 wt%, MgO=8.8 wt%)…斜長石(An87-89)・単斜輝石(Mg#79-81)・かんらん石が等粒状組織を呈する。多くの部分で構成鉱物同士は密着しているが、一部結晶粒界に極細粒部が認められる。かんらん石はほぼ全て蛇紋石等に変質している。・中粒かんらん石斑れい岩(Pl-richタイプ: SiO2=48.6-48.7 wt%, MgO=4.9-5.5 wt%)…自形の斜長石の間隙を他形の単斜輝石とかんらん石が埋める組織を呈する。構成鉱物同士は密着していることが多いが、一部結晶粒界や結晶内部に極細粒部が認められる。・磁鉄鉱含有粗粒かんらん石斑れい岩…斜長石(An84-85),単斜輝石(Mg#74),チタン磁鉄鉱,かんらん石からなるペグマティティック組織を示す。・細粒斑れい岩(SiO2=48 wt%, MgO=5.8 wt%)…細粒(粒径0.2-1 mm程度)の斜長石(An71-81),単斜輝石(Mg#73-76),燐灰石の間隙を,粒径数10㎛程度の単斜輝石、斜長石、磁鉄鉱等からなる極細粒の石基が埋める組織を呈する。岩石全体に対する石基の割合は4割程度である。・角閃石斑れい岩…斜長石(An84-89),普通角閃石,チタン磁鉄鉱からなり、多数の自形の斜長石を粗粒な多形普通角閃石が包有するオフィティック組織を呈する。 中粒かんらん石斑れい岩や細粒斑れい岩に見られる極細粒部の組織は急冷されたことを示す。ほぼ完晶質な中粒かんらん石斑れい岩は、固体岩石としてマグマに捕獲されたと考えられる。それに比べて極細粒部の石基の割合が高い細粒斑れい岩は、デイサイト~安山岩質マグマに取り込まれた時にクリスタルマッシュの状態であった可能性がある.