12:30 〜 14:00
[R6-P-07] 山口県東部、土生花崗閃緑岩の年代とSr–Nd–Hf 同位体組成
キーワード:土生花崗閃緑岩、マグマ過程、起源物質、マルチ同位体比組成、西南日本白亜紀火成活動
山口県東部には後期白亜紀の火成活動に伴う花崗岩類が分布している。これら花崗岩類は東アジア東縁に発達した白亜紀の間欠的な大規模火成活動(magmatic flare ups)期に対応し,高温型変成岩類の熱源と考えられている。本研究は,土生花崗閃緑岩の産状と記載岩石学的特徴を整理し,ジルコンU–Pb年代とその年代値で補正したSr–Nd同位体組成とジルコンのHf同位体組成によるマグマ過程と起源物質について議論する。本研究の成果は,白亜紀の大規模火成活動をもたらしたマグマの起源物質やその火成活動と同時代の高温型変成岩類との相互関係を検討するための基礎的なデータとなりうる。
土生花崗閃緑岩は東西約5km,南北約4kmの露出域をもち,ジュラ紀付加体の玖珂層群に対してラコリス状に貫入した。本岩体は母岩との接触部(岩体外縁部とルーフ部)において角閃石黒雲母トーナル岩~花崗閃緑岩(以後,優黒質相)が,岩体の内部に黒雲母花崗閃緑岩(優白質相)が分布し,後者が大部分を占める。また,優黒質相はしばしば暗色包有物を伴う。優黒質相は角閃石を含み苦鉄質鉱物に富むが,角閃石を含むこと以外の記載的特徴は優白質相と類似する。黒雲母や角閃石は自形~半自形で,斜長石と石英を主体とし,少量のアルカリ長石を伴う。優黒質相の角閃石は,しばしば黒雲母を包有することから,黒雲母の晶出は角閃石と同時期もしくはそれ以前と考えられる。また両岩相には,共通して汚濁帯を伴う斜長石が産する。このような産状は,固結しつつある優白質相に優黒質相が貫入し,両マグマの接触部でマグマ混交が生じたことを示唆する。
両岩相からジルコンを抽出し,九州大学のLA-ICP-MS,LA-MC-ICP-MSでU–Pb年代とHf同位体組成を求めたところ,優黒質相と優白質相のU–Pb年代が誤差の範囲で一致し,約105 Maを示した。また,優黒質相(n=13)と優白質相(n=12)のイプシロンHf (t)値はそれぞれ+0.1~+3.1, -1.9~+1.1 で,優白質相がややエンリッチした値を示す。全岩化学組成は,両岩相で一連のトレンドを形成し,Sr–Nd同位体初生値(105 Maで補正)を考慮すると,分化の進んだ優白質相は上昇過程で周囲の泥質岩を取り込み,同化したことを示唆する.産状,岩石組織および全岩化学組成の特徴から,土生花崗閃緑岩は優黒質相のマグマから分化した優白質相が地殻物質を同化しつつ定置したと考えられる。また,地殻物質の同化が限定的な優黒質相の2段階Hfモデル年代は1.0〜1.2 Gaを示すことから,土生花崗閃緑岩マグマは,中期原生代にマントルから分離した下部地殻物質の溶融によって生じたと推察される。
土生花崗閃緑岩は東西約5km,南北約4kmの露出域をもち,ジュラ紀付加体の玖珂層群に対してラコリス状に貫入した。本岩体は母岩との接触部(岩体外縁部とルーフ部)において角閃石黒雲母トーナル岩~花崗閃緑岩(以後,優黒質相)が,岩体の内部に黒雲母花崗閃緑岩(優白質相)が分布し,後者が大部分を占める。また,優黒質相はしばしば暗色包有物を伴う。優黒質相は角閃石を含み苦鉄質鉱物に富むが,角閃石を含むこと以外の記載的特徴は優白質相と類似する。黒雲母や角閃石は自形~半自形で,斜長石と石英を主体とし,少量のアルカリ長石を伴う。優黒質相の角閃石は,しばしば黒雲母を包有することから,黒雲母の晶出は角閃石と同時期もしくはそれ以前と考えられる。また両岩相には,共通して汚濁帯を伴う斜長石が産する。このような産状は,固結しつつある優白質相に優黒質相が貫入し,両マグマの接触部でマグマ混交が生じたことを示唆する。
両岩相からジルコンを抽出し,九州大学のLA-ICP-MS,LA-MC-ICP-MSでU–Pb年代とHf同位体組成を求めたところ,優黒質相と優白質相のU–Pb年代が誤差の範囲で一致し,約105 Maを示した。また,優黒質相(n=13)と優白質相(n=12)のイプシロンHf (t)値はそれぞれ+0.1~+3.1, -1.9~+1.1 で,優白質相がややエンリッチした値を示す。全岩化学組成は,両岩相で一連のトレンドを形成し,Sr–Nd同位体初生値(105 Maで補正)を考慮すると,分化の進んだ優白質相は上昇過程で周囲の泥質岩を取り込み,同化したことを示唆する.産状,岩石組織および全岩化学組成の特徴から,土生花崗閃緑岩は優黒質相のマグマから分化した優白質相が地殻物質を同化しつつ定置したと考えられる。また,地殻物質の同化が限定的な優黒質相の2段階Hfモデル年代は1.0〜1.2 Gaを示すことから,土生花崗閃緑岩マグマは,中期原生代にマントルから分離した下部地殻物質の溶融によって生じたと推察される。