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[R6-P-08] Rare earth element compositions and U-Pb zircon age of granodiorite porphyrites in the Noko Island, western part of northern Kyushu
Keywords:granodiorite porphyrite, Noko Island, Sr and Nd isotopic composition, Rare earth element compositions, U-Pb zircon age
北部九州西部,能古島に分布する北崎トーナル岩ならびに蓮華変成岩中に貫入する花崗閃緑斑岩岩脈(唐木田,1965;唐木田ほか,1994)は,記載岩石学的特徴,全岩化学組成の特徴から,花崗岩質マグマと北崎トーナル岩とは異なるトーナル岩質マグマの混合によって形成されたことが明らかになった(柚原,2017;柚原ほか,2019).しかし,その貫入時期については不明であった.そこで,花崗閃緑斑岩岩脈のU-Pbジルコン年代を測定した.本報告ではそれらの結果を報告するとともに,希土類元素ならびにSr・Nd同位対比組成からマグマ混合の端成分について検討を行う.花崗閃緑斑岩岩脈は主に,能古島および周辺地域の北崎トーナル岩と蓮華変成岩中に認められる.能古島西海岸の蓮華変成岩中に認められる花崗閃緑斑岩岩脈は,厚さ最大12 mで,NNEあるいはENE方向に高角度に貫入している.塊状で斑状の花崗閃緑斑岩からなり,最大長径120 cmの苦鉄質包有岩を多量に包有する.本花崗閃緑斑岩は,主に斜長石,普通角閃石,黒雲母,石英,アルカリ長石からなり,副成分鉱物として燐灰石,チタン石,ジルコン,不透明鉱物を含む.斑晶は斜長石,普通角閃石,黒雲母,石英からなる.石英斑晶は融食形を示し,斜長石斑晶には汚濁帯が認められる.普通角閃石と黒雲母斑晶の周囲は複雑に入り組んでいる.苦鉄質包有岩は,主に斜長石,普通角閃石,黒雲母,少量の石英からなり,副成分鉱物として燐灰石,チタン石,ジルコン,不透明鉱物を含む.斑晶は斜長石,普通角閃石,黒雲母と少量の石英からなる.石英斑晶は融食形を示し,反応縁が認められる場合がある.斜長石斑晶には汚濁帯が認められる.これらの斑晶の産状は,マグマ混合を示唆する.組成変化図において,本花崗閃緑斑岩は,岩脈中の苦鉄質包有岩と北崎トーナル岩中に貫入する細粒花崗岩岩脈の間の組成を示す.苦鉄質包有岩は多くの元素で北崎トーナル岩の組成範囲内にあるが,MgO,Na2O,Crに富み,Yにやや乏しい傾向にある.SiO2-A.S.I.図やMgO-Fe2O3*図では,細粒花崗岩,花崗閃緑斑岩,苦鉄質包有岩の形成するトレンドと,北崎トーナル岩の変化トレンドは大きく異なる.以上のことから,柚原(2017)は,本花崗閃緑斑岩は,花崗岩質マグマと苦鉄質包有岩の元となった北崎トーナル岩とは異なる組成を持つトーナル岩質マグマの混合により形成されたと考えた.花崗閃緑斑岩からジルコンを分離し,名古屋大学に設置のLA-ICP-MSを用いてU-Pb同位体比を測定した.U-Pbジルコン年代として112.8 ± 1.2 Maが得られた.測定に使用したジルコンは,オシラトリー累帯構造を示すことや,Th/U比が高いことから,火成起源であると考えられる.したがって,得られた年代は花崗閃緑斑岩の貫入時期と見なすことが可能である.北崎トーナル岩からは111.5 ± 1.3 MaのU-Pbジルコン年代が報告されており(村岡,2021),両者の活動時期がほぼ同時期であったことが推定される.C1コンドライト(Anders and Grevesse, 1989)で規格化した希土類元素パターンは,細粒花崗岩の一部を除き,軽希土類元素に富み,重希土類元素に乏しい右下がりで,重希土類元素側でややフラットになるパターンを示す.北崎トーナル岩,花崗閃緑斑岩中の苦鉄質包有岩,花崗閃緑斑岩の順に含有量が低くなる.細粒花崗岩のパターンは変化に富む.112.8 Maで年代補正した花崗閃緑斑岩と苦鉄質包有岩のSrおよびNd同位体比初生値(SrI)は,それぞれ0.70439~0.70462;0.512526~0.512583,0.70403~0.70438;0.512565~0.512594である.これに対し,111.5 Maで年代補正したSr・Nd同位体比は,北崎トーナル岩で0.70420~0.70449;0.512532~0.512723,細粒花崗岩で0.70442~0.70512;0.512439~0.512559である.イプシロン図では,北崎トーナル岩よりも花崗閃緑斑岩がややエンリッチした同位体比組成を示すが,一部重複している.