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[R6-P-10] 福岡県東部に産する花崗岩–花崗閃緑岩の貫入関係と岩相区分
「発表賞エントリー」
キーワード:深成岩、白亜紀、複合岩体、貫入関係、マグマ混合
【はじめに】北部九州には白亜紀花崗岩類が広く分布し, 岩相や貫入関係から17~19岩体が認識されている(大和田ほか, 1999, 地質学論集 53, 349–363; 柚原ほか, 2019, 地球科学 73, 163–178).また, 小倉–田川構造線を境界にその東側と西側では岩石化学的特徴(特に, Sr含有量)が異なり(井沢ほか, 1994, 西南学院大児童教育学論集 20, 21–54), 構造線より西側に分布する花崗岩類を「北九州主部花崗岩類」, 東側に分布する花崗岩類を「北九州西部花崗岩類」(唐木田, 1992, 日本の地質9 九州地方, 85–89; 大和田・亀井, 2010, 日本地質学会編, 日本地方地質誌8 九州・沖縄地方, 304–311)と区別して議論される場合がある.北部九州主部花崗岩類に関してはこれまで多くの岩石学的な検討がなされてきたが, 北部九州東部花崗岩類の研究例(柚原ほか, 2019, 地球科学 73, 163-–178)は数少なく, 未だ貫入関係や岩相区分などの基本的情報も不明瞭な点が多い.白亜紀北部九州バソリスの火成活動を包括的に理解するためには北部九州東部花崗岩類の岩石学的検討の蓄積が非常に重要である.このような背景から近年, 北部九州東部花崗岩類を対象にジルコンU–Pb年代測定を用いた地質年代学的検討が精力的に進められ, 包括的な貫入関係図が確立された(例えば, 柚原ほか, 2023, 地球科学 77, 147–163).しかしながら, 直接的な貫入関係を示す野外地質学的証拠は少ないほか, 貫入関係や岩相区分に関しても様々な見解があり(村上・藤本, 1957, 岩石鉱物鉱床学会誌41, 164–171; 村上, 1994, 西南学院大児童教育学論集 20, 21–54; 唐木田, 1985, 日本応用地質学会 九州支部会報 6, 2–12), 議論の余地がある.そこで, 本研究では福岡県赤村からみやこ町にかけて露出する北部九州東部花崗岩類を対象に野外地質学的検討を主として貫入関係と岩相区分を再検討することを目的とする.また, 複数の花崗岩体が複雑に分布する地域において各花崗岩体と母岩との構造関係を明確にし, 複合岩体の3次元的な貫入関係も考察する.
【地質概説・岩石記載】本調査地域の地質は白亜紀に形成した落合花崗閃緑岩, 朝倉花崗閃緑岩, 油須原花崗岩および真崎花崗岩の4つの花崗岩体から構成され, 中新世後期〜鮮新世前期の坂本累層が真崎花崗岩と油須原花崗岩を不整合に覆う.石英閃緑岩は南東側に小規模岩体として存在する.真崎花崗岩は半自形粒状〜斑状組織を示し, 主構成鉱物として石英, アルカリ長石, 斜長石および黒雲母で構成される粗粒な岩石である.また, 斑状組織の岩相では一般に石英とアルカリ長石が斑晶鉱物となる.一方で, 油須原花崗岩は真崎花崗岩と同様の鉱物組み合わせを持つが, 細粒かつ塊状の岩相が特徴である.朝倉花崗閃緑岩は半自形粒状〜斑状組織を示し, 主構成鉱物として斜長石, 黒雲母, 角閃石および石英で構成される.また, 稀に黒雲母や角閃石の集斑状組織が確認される.
【各花崗岩体の岩石学的特徴と貫入関係】複合岩体を構成する花崗岩体の中には苦鉄質の同時性岩脈やMMEが確認される.同時性岩脈は真崎花崗岩と油須原花崗岩中でしばしば確認されるが,朝倉花崗閃緑岩と落合花崗閃緑岩には少ない.が, そのほとんどは真崎花崗岩でみられる.油須原花崗岩は苦鉄質岩脈みられるが, MMEはほとんど確認されない.朝倉花崗閃緑岩は苦鉄質岩脈やMMEは見られない.また, 本地域に分布する朝倉花崗閃緑岩赤岩体は朝倉市周辺に分布する朝倉花崗閃緑岩本岩体と異なり, 一部斑状組織を示す岩相をもつ.油須原花崗岩は真崎花崗岩と朝倉花崗岩閃緑岩を貫入し, 優白質花崗岩に貫入される(柚原ほか, 2023)とされているが朝倉花崗閃緑岩赤岩体と油須原花崗岩が混合している産状が確認された. 朝倉花崗岩閃緑岩赤岩体の形成年代は98.7±0.6Ma(柚原ほか, 2023), 油須原花崗岩の活動形成年代98.6±0.9Ma(柚原ほか, 2022, 地球科学, 第76, 87–104)であり, 両岩体の形成年代は誤差範囲といえる. これらより両岩体は同時性であったと考えられる. また, 真崎花崗岩にルーフ状に接する油須原花崗岩の産状が確認された. このように油須原花崗岩と真崎花崗岩の貫入関係やその前後関係は複雑である.現状の各岩体の貫入関係は, 落合花崗閃緑岩, 真崎花崗岩, 油須原花崗岩および朝倉花崗閃緑岩赤岩体(油須原花崗岩と朝倉花崗閃緑岩赤岩体同時期)の貫入順序であると推察される.今後の目標としては貫入関係をさらに明確化し, 苦鉄質岩脈や石英閃緑岩の活動時期を考察する.
【地質概説・岩石記載】本調査地域の地質は白亜紀に形成した落合花崗閃緑岩, 朝倉花崗閃緑岩, 油須原花崗岩および真崎花崗岩の4つの花崗岩体から構成され, 中新世後期〜鮮新世前期の坂本累層が真崎花崗岩と油須原花崗岩を不整合に覆う.石英閃緑岩は南東側に小規模岩体として存在する.真崎花崗岩は半自形粒状〜斑状組織を示し, 主構成鉱物として石英, アルカリ長石, 斜長石および黒雲母で構成される粗粒な岩石である.また, 斑状組織の岩相では一般に石英とアルカリ長石が斑晶鉱物となる.一方で, 油須原花崗岩は真崎花崗岩と同様の鉱物組み合わせを持つが, 細粒かつ塊状の岩相が特徴である.朝倉花崗閃緑岩は半自形粒状〜斑状組織を示し, 主構成鉱物として斜長石, 黒雲母, 角閃石および石英で構成される.また, 稀に黒雲母や角閃石の集斑状組織が確認される.
【各花崗岩体の岩石学的特徴と貫入関係】複合岩体を構成する花崗岩体の中には苦鉄質の同時性岩脈やMMEが確認される.同時性岩脈は真崎花崗岩と油須原花崗岩中でしばしば確認されるが,朝倉花崗閃緑岩と落合花崗閃緑岩には少ない.が, そのほとんどは真崎花崗岩でみられる.油須原花崗岩は苦鉄質岩脈みられるが, MMEはほとんど確認されない.朝倉花崗閃緑岩は苦鉄質岩脈やMMEは見られない.また, 本地域に分布する朝倉花崗閃緑岩赤岩体は朝倉市周辺に分布する朝倉花崗閃緑岩本岩体と異なり, 一部斑状組織を示す岩相をもつ.油須原花崗岩は真崎花崗岩と朝倉花崗岩閃緑岩を貫入し, 優白質花崗岩に貫入される(柚原ほか, 2023)とされているが朝倉花崗閃緑岩赤岩体と油須原花崗岩が混合している産状が確認された. 朝倉花崗岩閃緑岩赤岩体の形成年代は98.7±0.6Ma(柚原ほか, 2023), 油須原花崗岩の活動形成年代98.6±0.9Ma(柚原ほか, 2022, 地球科学, 第76, 87–104)であり, 両岩体の形成年代は誤差範囲といえる. これらより両岩体は同時性であったと考えられる. また, 真崎花崗岩にルーフ状に接する油須原花崗岩の産状が確認された. このように油須原花崗岩と真崎花崗岩の貫入関係やその前後関係は複雑である.現状の各岩体の貫入関係は, 落合花崗閃緑岩, 真崎花崗岩, 油須原花崗岩および朝倉花崗閃緑岩赤岩体(油須原花崗岩と朝倉花崗閃緑岩赤岩体同時期)の貫入順序であると推察される.今後の目標としては貫入関係をさらに明確化し, 苦鉄質岩脈や石英閃緑岩の活動時期を考察する.