12:30 〜 14:00
[R6-P-11] 花崗岩中の石英の結晶化プロセス:九州の大崩山花崗岩体のマグマ溜りプロセスの理解
キーワード:石英、カソードルミネッセンス、TitaniQ温度計、大崩山花崗岩体、Ti-in-zircon温度計
石英は珪長質深成岩中に普遍的に含有される鉱物である。このため,石英の結晶化プロセス(結晶の内部構造や温度条件などの結晶化の際の情報)は,花崗岩質マグマの貫入・定置に関するマグマ溜りプロセスの情報を保存する。本研究では宮崎県の大崩山花崗岩体の石英の結晶化プロセスを解明することを目的とする。1つの珪長質の深成岩体において,その岩体内部の異なる岩相においても石英はしばしば共通して産出する。本研究で対象とする大崩山花崗岩体は鉛直方向において上方の珪長質の黒雲母花崗岩から,ホルンブレンド黒雲母花崗岩を経て,下方の苦鉄質のホルンブレンド黒雲母花崗閃緑岩へと変化するが,そのいずれでも石英は観察される。このため,複数の岩相の石英から温度条件などの結晶化の際の情報を取得し,結晶化プロセスを解明することは,深成岩体全体のマグマ溜りプロセスの把握へと発展可能である。本研究では石英の結晶化プロセスの解明に,カソードルミネッセンス(CL)像およびチタン(Ti)濃度を組み合わせる方法を用いる。CL像は,結晶構造の乱れや結晶中の微量な含有成分(不純物)を反映するため,結晶成長の様式と関連付けることが可能である(例えば,Drivenes et al., 2016)。石英中のTi濃度は石英の結晶化温度の推定に利用できる(例えば,Wark and Watson, 2006)。本研究は,1)薄片による石英結晶の観察,2)分離した石英の複数断面による観察の2つのアプローチにより,マグマ溜りの中の石英結晶の石英粒の三次元的な内部構造と成長特性を明らかにした。薄片中のジルコンを包有する石英は,ジルコンの結晶化に続いて石英の結晶化が生じたことを示す。このことは,冷却中のマグマ溜りの中で石英の結晶化温度はジルコンの結晶化温度よりも低温であるという制約を与える。このような岩石学的な制約により,適切な地質温度計の採用が可能となり,正確な石英の結晶化温度の決定が可能となった。分離した石英結晶の複数断面を用いた観察により,結晶粒子内の三次元内部構造と真の結晶化の開始地点が取得できる。花崗岩体内の岩相間のCL特性や結晶化温度の違いは,時空間的なマグマ溜りプロセスの解明に貢献する。なお,本研究は名古屋大学宇宙地球環境研究所・一般共同研究プログラムおよび科研費・基盤研究B〔21H01865〕の支援のもと実施された。また,ジルコンのデータは経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成31-令和4年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」(JPJ007597)の成果の一部である。