12:30 PM - 2:00 PM
[R6-P-13] Differentiation Processes of Granitic Magma Chamber Recorded in 'Oshima-ishi' Distributed in Oshima, Geiyo islands, Ehime Prefecture
Keywords:Oshima-ishi, Cretaceous granitoids, Differentiation Processes, Mafic magma, Oshima, Geiyo islands
分化した組成を示す花崗岩質マグマの生成プロセスは,活動的大陸縁における大陸地殻の成長・成熟プロセスを考える上で重要な情報である。西南日本内帯には白亜紀に形成された花崗岩類が広く分布している。これらの分布は当時の最も海溝側に位置しており,白亜紀の活動的大陸縁における大陸地殻の成長・成熟過程を記録していると考えられる。また,これらの地域には花崗岩中にしばしば同時性の苦鉄質岩脈や苦鉄質包有岩(MME)がみられ,花崗岩質マグマ溜まりプロセスにおいて苦鉄質マグマが関与したことを示唆している。しかしながら,苦鉄質マグマに関連した花崗岩質マグマの分化プロセスについては不明な点が多い。
愛媛県芸予諸島大島北部には花崗岩石材として知られる“大島石”が分布する。本研究では,この“大島石”とそれらに伴って産出する閃緑岩について記載岩石学研究,鉱物化学組成分析,全岩主要微量元素組成分析を行い,その分化プロセスについて議論した。
大島北部に分布する花崗岩類は記載岩石学的特徴から,大島Ⅰ型と大島Ⅱ型に区分できる。これらは,大島Ⅱ型が大島Ⅰ型を胚胎するような累帯深成岩体様の分布域を示し,両者の境界は漸移的である。大島Ⅰ型は優白質塊状で部分的にペグマタイトを伴う。一方で,大島Ⅱ型は大島Ⅰ型と比較するとわずかに優黒質であり,岩体周縁部では閃緑岩質なMMEや黒雲母からなるクロットが特徴的に含まれる。鉱物化学組成分析では,閃緑岩と大島Ⅰ型において,黒雲母のMg#(Mg# = Mg/(Mg+Fe))がそれぞれ0.26〜0.30と0.15〜0.18の異なる値を示した。全岩化学組成分析では,大島Ⅰ型と大島Ⅱ型において主要元素含有量(TiO2, MnO, MgO, CaO, Na2O, P2O5)およびMgO/(FeO + MgO) (mol比),CaO/(CaO + Na₂O) (mol比)で両者に有意な差が認められ,多くの元素がハーカー図上で異なる組成トレンドを示した。燐灰石飽和温度計(Harrison and Watson, 1984, Geochim. Cosmochim. Acta)を用いた温度推定では,大島Ⅰ型が870〜890 ℃,大島Ⅱ型が890〜920 ℃であり,大島Ⅱ型がより高い飽和温度を示した。大島Ⅱ型はMMEやクロットなどの苦鉄質マグマとのミキシングを示唆する産状(Hibbard, 1995, Prentice Hall)を示しており,燐灰石飽和温度計による温度見積もりと整合的である。
大島Ⅰ型と大島Ⅱ型および閃緑岩の示すこれらの岩石学的特徴は,閃緑岩質マグマからの結晶分化による連続的な岩相変化を支持せず,むしろ,閃緑岩質マグマによる花崗岩質マグマの加熱およびマグマ混合による大島Ⅱ型の形成とその際のメルトの絞り出しによる大島Ⅰ型の形成を示唆する。
謝辞 NPO法人能島の里村上利雄氏,大島石協同組合組合長小田信喜氏をはじめ大島石の丁場の皆様には大島における野外調査において多大なるご協力をいただいた。記して感謝申し上げる。
愛媛県芸予諸島大島北部には花崗岩石材として知られる“大島石”が分布する。本研究では,この“大島石”とそれらに伴って産出する閃緑岩について記載岩石学研究,鉱物化学組成分析,全岩主要微量元素組成分析を行い,その分化プロセスについて議論した。
大島北部に分布する花崗岩類は記載岩石学的特徴から,大島Ⅰ型と大島Ⅱ型に区分できる。これらは,大島Ⅱ型が大島Ⅰ型を胚胎するような累帯深成岩体様の分布域を示し,両者の境界は漸移的である。大島Ⅰ型は優白質塊状で部分的にペグマタイトを伴う。一方で,大島Ⅱ型は大島Ⅰ型と比較するとわずかに優黒質であり,岩体周縁部では閃緑岩質なMMEや黒雲母からなるクロットが特徴的に含まれる。鉱物化学組成分析では,閃緑岩と大島Ⅰ型において,黒雲母のMg#(Mg# = Mg/(Mg+Fe))がそれぞれ0.26〜0.30と0.15〜0.18の異なる値を示した。全岩化学組成分析では,大島Ⅰ型と大島Ⅱ型において主要元素含有量(TiO2, MnO, MgO, CaO, Na2O, P2O5)およびMgO/(FeO + MgO) (mol比),CaO/(CaO + Na₂O) (mol比)で両者に有意な差が認められ,多くの元素がハーカー図上で異なる組成トレンドを示した。燐灰石飽和温度計(Harrison and Watson, 1984, Geochim. Cosmochim. Acta)を用いた温度推定では,大島Ⅰ型が870〜890 ℃,大島Ⅱ型が890〜920 ℃であり,大島Ⅱ型がより高い飽和温度を示した。大島Ⅱ型はMMEやクロットなどの苦鉄質マグマとのミキシングを示唆する産状(Hibbard, 1995, Prentice Hall)を示しており,燐灰石飽和温度計による温度見積もりと整合的である。
大島Ⅰ型と大島Ⅱ型および閃緑岩の示すこれらの岩石学的特徴は,閃緑岩質マグマからの結晶分化による連続的な岩相変化を支持せず,むしろ,閃緑岩質マグマによる花崗岩質マグマの加熱およびマグマ混合による大島Ⅱ型の形成とその際のメルトの絞り出しによる大島Ⅰ型の形成を示唆する。
謝辞 NPO法人能島の里村上利雄氏,大島石協同組合組合長小田信喜氏をはじめ大島石の丁場の皆様には大島における野外調査において多大なるご協力をいただいた。記して感謝申し上げる。