一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

口頭講演

R7:岩石・鉱物・鉱床 (資源地質学会 との共催 セッション)

2024年9月12日(木) 14:00 〜 17:30 ESホール (東山キャンパス)

座長:秋澤 紀克(東京大学大気海洋研究所)、越後 拓也(秋田大学)

岩石学,鉱物学,鉱床学,地球化学などの分野をはじめとして,地球・惑星物質科学全般にわたる岩石及び鉱物に関する研究発表を広く募集する。地球構成物質についての多様な研究成果の発表の場となることを期待する。

14:40 〜 14:55

[R7-03] 南アフリカ共和国ブッシュフェルト複合岩体におけるPGE含有(Fe,Ni,Co)AsS固溶体の産状

「発表賞エントリー」

*窪田 朔也1、越後 拓也1、渡辺 寧1 (1. 秋田大・院国際資源)

キーワード:PGE鉱化作用、ブッシュフェルト複合岩体、同化作用

世界最大のPlatinum Group Elements (PGE) 鉱床である南アフリカ共和国のBushveld Igneous Complex中の鉱化帯の一つであるPlatreefは,マグマと堆積岩が混成あるいは反応したことが多くの先行研究によって確認されている.主に輝岩で構成されるPlatreef中のNi-Co-PGE鉱化作用については多くの研究がされているが,下位の堆積岩中の同鉱化作用は明らかではなかった.Platreef南部のIvanplats鉱山周辺では苦灰岩,珪岩,頁岩など多様な堆積岩が分布しており,本研究では,Ivanplats鉱山で得られた試錐試料の鉱物記載を主とした各種分析を行った.本試料には堆積岩と火成岩が混ざった組織を持つ岩石が見られ,混成岩とした.主な岩相は苦灰岩との混成岩,珪岩,頁岩との混成岩,Platreefの粗粒輝岩と輝岩である.顕微鏡観察,SEM-EDS分析の結果,珪岩以外の岩相でPGE鉱化作用がみられた.その中でも頁岩との混成岩でみられたPlatinum Group Minetals (PGM) はおおむね自形の (Fe,Ni,Co)AsS固溶体に内包されるという特徴的な産状を示す.このとき周囲のBase Metal Sulfides (BMS) には共生しない.EPMAの結果,(Fe,Ni,Co)AsS固溶体はPtが最大で0.038wt%,Pdが0.993wt%含まれていた.ポータブルXRFで測定したPlatreef輝岩中のヒ素濃度は最大5ppmだが,頁岩との混成岩では最大45ppmであった.頁岩との混成岩でみられた (Fe,Ni,Co)AsS固溶体は自形であり,他形を示す他のBMSと比較して晶出が早かったと考えられる.頁岩との混成岩でみられた (Fe,Ni,Co)AsS固溶体と共生するPGMは,概ね(Fe,Ni,Co)AsS固溶体に内包され,(Fe,Ni,Co)AsS固溶体中にPGEが微量に含まれることからPGMがヒ素に富む硫化物メルトから晶出したと考えられる.先行研究によると,Transvaal累層群中の頁岩のヒ素濃度は最大300ppmと高い値を示し,ポータブルXRFで測定したPlatreef輝岩のヒ素含有量は低かった.これらの結果より,頁岩が硫化物メルトにヒ素を供給し,ヒ素に富んだ硫化物メルト内でPGMに富む (Fe,Ni,Co)AsS固溶体が晶出し,PGMが (Fe,Ni,Co)AsS固溶体から離溶し,後にBMSが晶出したと考えられる.これらの考察から頁岩との混成岩では,頁岩から供給されたヒ素によって生成されたヒ素に富む硫化物メルトがPGEを含む (Fe,Ni,Co)AsS固溶体を形成し,その後 (Fe,Ni,Co)AsS固溶体からPGMが離溶して晶出したと結論付けた.