5:00 PM - 5:15 PM
[R7-11] Quantification of Mineral Modal and Zoning Ratios by Powder X-ray Diffraction: Advancing Towards Big Data Era
「発表賞エントリー」
Keywords:Powder X-ray Diffraction, Rietveld Refinement, Mineral Modal, Mineral Zoning, Quantification
岩石学分野では、鉱物組成の定量分析と組織観察による示強変数的取り扱いが主流である一方、反応過程とその進行度を記録する岩石中の構成鉱物・反応組織の数値化は殆どされていない。粉末X線回折データ(PXRD)は、鉱物の結晶構造・鉱物組成の変化に加え、全岩鉱物量比・累帯構造量比の情報を内包している (e.g., Antao et al. 2015)。しかし、天然岩石のPXRDによる定量的な分析例は非常に少なく(e.g., Hill et al. 1993)、また多相岩石PXRDで固溶体鉱物の累帯構造を分離して解析した例はない。本研究の目的は、PXRDを用いて多相岩石試料の全岩鉱物量比・反応組織量比の数値化手法を確立することである。
検証試料として、三波川変成帯の四国中央部・汗見川地域に露出する泥質-苦鉄質片岩の岩相境界から採取した、計48試料を用いた。この露頭では、岩相境界に向かって鉱物組み合わせが顕著に変化しており、Na-角閃石とアクチノ閃石で構成される角閃石の不連続な累帯構造が観察されることから、全岩鉱物量比・反応組織量比の数値化を検証する試料群として最適である。
PXRDの測定は、実験室PXRD(Rigaku MiniFlex600)および放射光PXRD(SPring-8、BL19B2)で実施し、得られたデータをリートベルト解析ソフトProfex(Doebelin & Kleeberg, 2015)で解析した。解析結果は、累帯構造ごとのピーク同定、全岩組成の比較、薄片から得られる鉱物量比との比較を行った。
結果として、放射光PXRDで角閃石の累帯構造ごとの明瞭なピーク分離が観察され、実験室PXRDでは、角度分解能不足のため、肩を持つピークが見られるに留まった。全岩組成の比較では、低含有量成分(濃度<1%)を除き、実験室・放射光PXRDの両方でXRFから得られた全岩組成と一致した(差異<±30%)。一方で、低含有量では、実験室PXRDで過大評価が見られた。
実験室PXRDと放射光PXRDから得られた鉱物量比の比較では、高含有量の鉱物(e.g., Albite, Quartz, Chlorite, Epidote)で一致し、低含有量のApatite、Titaniteでは実験室PXRDに不一致が見られた。また、角閃石のうち、量の少ないNa-角閃石では、実験室PXRDで過大評価が見られた。しかし、Na-角閃石とアクチノ閃石の量比は、放射光PXRDから得られる値と定性的に一致していた。これらの低含有量鉱物における実験室PXRDの差異は、S/N比と角度分解能の問題による解析誤差に起因すると考えられる。
本研究は、PXRDを用いた鉱物量比・累帯構造量比の数値化を検証し、特に放射光PXRDが低含有量鉱物や固溶体鉱物の累帯構造の分析にまで有用であることを示した。本研究成果は、これまで岩石学分野で行われてこなかった岩石記載の示量変数化を推し進め、これから迎えるビッグデータ時代に岩石学分野が適応するための一歩となる。
Antao, Sytle M., Mashrur Zaman, Vitor L. Gontijo, Eric S. Camargo, and Robert A. Marr. 2015. “Optical Anisotropy, Zoning, and Coexistence of Two Cubic Phases in Andradites from Quebec and New York.” Contributions to Mineralogy and Petrology. Beitrage Zur Mineralogie Und Petrologie 169 (2): 10.
Hill, R. J., G. Tsambourakis, and I. C. Madsen. 1993. “Improved Petrological Modal Analyses from X-Ray Powder Diffraction Data by Use of the Rietveld Method I. Selected Igneous, Volcanic, and Metamorphic Rocks.” Journal of Petrology 34 (5): 867–900.
Doebelin, Nicola, and Reinhard Kleeberg. 2015. “Profex: A Graphical User Interface for the Rietveld Refinement Program BGMN.” Journal of Applied Crystallography 48 (Pt 5): 1573–80.
検証試料として、三波川変成帯の四国中央部・汗見川地域に露出する泥質-苦鉄質片岩の岩相境界から採取した、計48試料を用いた。この露頭では、岩相境界に向かって鉱物組み合わせが顕著に変化しており、Na-角閃石とアクチノ閃石で構成される角閃石の不連続な累帯構造が観察されることから、全岩鉱物量比・反応組織量比の数値化を検証する試料群として最適である。
PXRDの測定は、実験室PXRD(Rigaku MiniFlex600)および放射光PXRD(SPring-8、BL19B2)で実施し、得られたデータをリートベルト解析ソフトProfex(Doebelin & Kleeberg, 2015)で解析した。解析結果は、累帯構造ごとのピーク同定、全岩組成の比較、薄片から得られる鉱物量比との比較を行った。
結果として、放射光PXRDで角閃石の累帯構造ごとの明瞭なピーク分離が観察され、実験室PXRDでは、角度分解能不足のため、肩を持つピークが見られるに留まった。全岩組成の比較では、低含有量成分(濃度<1%)を除き、実験室・放射光PXRDの両方でXRFから得られた全岩組成と一致した(差異<±30%)。一方で、低含有量では、実験室PXRDで過大評価が見られた。
実験室PXRDと放射光PXRDから得られた鉱物量比の比較では、高含有量の鉱物(e.g., Albite, Quartz, Chlorite, Epidote)で一致し、低含有量のApatite、Titaniteでは実験室PXRDに不一致が見られた。また、角閃石のうち、量の少ないNa-角閃石では、実験室PXRDで過大評価が見られた。しかし、Na-角閃石とアクチノ閃石の量比は、放射光PXRDから得られる値と定性的に一致していた。これらの低含有量鉱物における実験室PXRDの差異は、S/N比と角度分解能の問題による解析誤差に起因すると考えられる。
本研究は、PXRDを用いた鉱物量比・累帯構造量比の数値化を検証し、特に放射光PXRDが低含有量鉱物や固溶体鉱物の累帯構造の分析にまで有用であることを示した。本研究成果は、これまで岩石学分野で行われてこなかった岩石記載の示量変数化を推し進め、これから迎えるビッグデータ時代に岩石学分野が適応するための一歩となる。
Antao, Sytle M., Mashrur Zaman, Vitor L. Gontijo, Eric S. Camargo, and Robert A. Marr. 2015. “Optical Anisotropy, Zoning, and Coexistence of Two Cubic Phases in Andradites from Quebec and New York.” Contributions to Mineralogy and Petrology. Beitrage Zur Mineralogie Und Petrologie 169 (2): 10.
Hill, R. J., G. Tsambourakis, and I. C. Madsen. 1993. “Improved Petrological Modal Analyses from X-Ray Powder Diffraction Data by Use of the Rietveld Method I. Selected Igneous, Volcanic, and Metamorphic Rocks.” Journal of Petrology 34 (5): 867–900.
Doebelin, Nicola, and Reinhard Kleeberg. 2015. “Profex: A Graphical User Interface for the Rietveld Refinement Program BGMN.” Journal of Applied Crystallography 48 (Pt 5): 1573–80.