12:30 PM - 2:00 PM
[R7-P-02] Review for Mineralogical Science: Mineral Resources, Heritage Stone, and SDGs
Keywords:Mineral Resources, Heritage Stone
英文ニュース誌から野外系の鉱物科学分野に関する話題を「岩石鉱物科学」に紹介してきた。それらから数項目を選んで記す。
1鉱物資源と経済 (米国2023年の例)
米国鉱物資源の開発,リサイクル,加工が米国経済にどのように貢献しているかを記す。
・米国の鉱山から採掘される鉱物資源は1050億ドル。
・このうち鉱物資源正味輸出は47億ドル(輸出 106億ドル-輸入 59億ドル)。
・米国国内でリサイクルされる金属や鉱物は450億ドル。
・スクラップ正味輸出は170億ドル(輸出250億ドル-輸入80億ドル)である。
鉱石が加工(製錬)されて,製造業で使う材料となる段階では次のようになる。
・米国内で加工された原材料8900億ドルである。
・加工原材料の正味輸入は1020億ドル(輸入 2030億ドル-輸出 1010億ドル)である。
鉱物資源からの材料は製造業で使われ製品となり経済的価値が増す。
・鉱物材料を利用する産業の経済は3兆8400 億ドルで,米国の経済 (国内総生産27兆3560億ドル)に貢献する。鉱物資源は,米国経済全体の約15%となる。
2未発見銅鉱床は35億トン
既存鉱床と今後発見予想の銅鉱床の埋蔵量が次のように推定できる。(1)既知鉱床の地質データを整理,(2)どんな地質にどんな鉱床タイプが伴うかのモデルから地域を特定,(3)品位モデルから既知鉱床の埋蔵量と未発見鉱床の埋蔵量推定。
南アメリカでは,未開発確認鉱床810,000千トン(斑岩タイプ),510千トン(堆積性タイプ)である。未発見鉱床750,000千トン(斑岩), 堆積性タイプはない。
北中央アジアでは,斑岩タイプはモンゴルとカザフスタンに巨大鉱床がある。堆積性タイプはロシアとカザフスタンに巨大鉱床がある。未開発確認鉱床130,000千トン(斑岩タイプ),48,000千t(堆積性タイプ)である。未発見鉱床440,000千トン(斑岩タイプ), 53,000千トン(堆積性タイプ)である。
上記地域にそのほかの地域の推定を加えると,世界全体で確認できている鉱床は21億トン,未発見鉱床は35億トンと見積もられる。
3 米国のクリティカルミネラル
これまでの35種から2022年に50種となった。ニッケルと亜鉛が加わり,これまで希土類元素と一括されていた元素が個々の元素となった。白金族は白金とパラジウムであったものから白金族6元素となった。一方,ヘリウム,カリウム,レニウム,ストロンチウム,ウランが除かれた。
4 ヘリテージストーン
4.1 グローバルヘリテージストーン資源(GHSR)
2012年のIGCでヘリテージストーン作業グループ(HSTG)が発足し,自然の岩石をグローバルヘリテージストーン資源(GHSR)として人類の文化の中で意識することをめざすこととなった。この指定を受けることで,岩石資源管理の意識が高まり,石材採掘を将来にわたって続けていくこととなる。
事例紹介 カンブリア紀ウェールズ粘板岩
採掘の歴史は,ローマ時代からの歴史がある。著名な建造物として,ローマ時代の砦,中世のエドワード一世の白の屋根,近世のバッキンガム宮殿がある。産業の歴史的側面では,水力,蒸気機関,電力を積極的に取り入れてきた。19世紀に採石場から水運の場まで蒸気機関車を利用した運搬が行なわれた。これは世界中に波及した。
4.2 ヘリテージストーン(HS)
GHSR認定における欧州を主にした地理的偏在と対象岩石の種類を広げる見直しが2022年に行われ,ヘリテージストーン(HS)の目的が改められた。その結果2022年に発展途上国から4つのHS(インド3,メキシコ1)が認定された。
事例紹介 テソアントラ凝灰岩Tezoantla Tuff
メキシコで最初のHSで,いままで対象にならなかった凝灰岩が認定された。採掘の歴史は,16世紀のスペイン植民地時代までさかのぼる。19世紀後半には英国コーンウォールから技術者と資本家が来て採掘するようになった。現在は火薬を用い,ハンマーやバールなどの手作業で,60-80cmのブロックとして切り出している。建造物として,16世紀建立のサンタ・ベラクルス教会,メキシコ革命100年記念で1910年建立のイタルゴ州都の時計塔があげられる。産業の歴史では,アコスタ銀鉱山の蒸気機関動力舎がある。
5 SDGsに絡めて
2015年9月国連は持続可能な開発目標(SDGs)を採択した。そこでは17の目標と169のターゲットを定めた。Gill(2017)は, 17の目標と地質学諸分野の役割を整理した。
例 「鉱物岩石分野」では何が求められるか。鉱物岩石資源の同定と開発が求められる。製品の原料となる鉱床,建材原石,ガラス材料の開発である。従来の資源探査に加えて,専門家は地質学がSDGsにどう貢献するかの説明責任がある。すなわち,開発に加え持続可能性を説明する。
1鉱物資源と経済 (米国2023年の例)
米国鉱物資源の開発,リサイクル,加工が米国経済にどのように貢献しているかを記す。
・米国の鉱山から採掘される鉱物資源は1050億ドル。
・このうち鉱物資源正味輸出は47億ドル(輸出 106億ドル-輸入 59億ドル)。
・米国国内でリサイクルされる金属や鉱物は450億ドル。
・スクラップ正味輸出は170億ドル(輸出250億ドル-輸入80億ドル)である。
鉱石が加工(製錬)されて,製造業で使う材料となる段階では次のようになる。
・米国内で加工された原材料8900億ドルである。
・加工原材料の正味輸入は1020億ドル(輸入 2030億ドル-輸出 1010億ドル)である。
鉱物資源からの材料は製造業で使われ製品となり経済的価値が増す。
・鉱物材料を利用する産業の経済は3兆8400 億ドルで,米国の経済 (国内総生産27兆3560億ドル)に貢献する。鉱物資源は,米国経済全体の約15%となる。
2未発見銅鉱床は35億トン
既存鉱床と今後発見予想の銅鉱床の埋蔵量が次のように推定できる。(1)既知鉱床の地質データを整理,(2)どんな地質にどんな鉱床タイプが伴うかのモデルから地域を特定,(3)品位モデルから既知鉱床の埋蔵量と未発見鉱床の埋蔵量推定。
南アメリカでは,未開発確認鉱床810,000千トン(斑岩タイプ),510千トン(堆積性タイプ)である。未発見鉱床750,000千トン(斑岩), 堆積性タイプはない。
北中央アジアでは,斑岩タイプはモンゴルとカザフスタンに巨大鉱床がある。堆積性タイプはロシアとカザフスタンに巨大鉱床がある。未開発確認鉱床130,000千トン(斑岩タイプ),48,000千t(堆積性タイプ)である。未発見鉱床440,000千トン(斑岩タイプ), 53,000千トン(堆積性タイプ)である。
上記地域にそのほかの地域の推定を加えると,世界全体で確認できている鉱床は21億トン,未発見鉱床は35億トンと見積もられる。
3 米国のクリティカルミネラル
これまでの35種から2022年に50種となった。ニッケルと亜鉛が加わり,これまで希土類元素と一括されていた元素が個々の元素となった。白金族は白金とパラジウムであったものから白金族6元素となった。一方,ヘリウム,カリウム,レニウム,ストロンチウム,ウランが除かれた。
4 ヘリテージストーン
4.1 グローバルヘリテージストーン資源(GHSR)
2012年のIGCでヘリテージストーン作業グループ(HSTG)が発足し,自然の岩石をグローバルヘリテージストーン資源(GHSR)として人類の文化の中で意識することをめざすこととなった。この指定を受けることで,岩石資源管理の意識が高まり,石材採掘を将来にわたって続けていくこととなる。
事例紹介 カンブリア紀ウェールズ粘板岩
採掘の歴史は,ローマ時代からの歴史がある。著名な建造物として,ローマ時代の砦,中世のエドワード一世の白の屋根,近世のバッキンガム宮殿がある。産業の歴史的側面では,水力,蒸気機関,電力を積極的に取り入れてきた。19世紀に採石場から水運の場まで蒸気機関車を利用した運搬が行なわれた。これは世界中に波及した。
4.2 ヘリテージストーン(HS)
GHSR認定における欧州を主にした地理的偏在と対象岩石の種類を広げる見直しが2022年に行われ,ヘリテージストーン(HS)の目的が改められた。その結果2022年に発展途上国から4つのHS(インド3,メキシコ1)が認定された。
事例紹介 テソアントラ凝灰岩Tezoantla Tuff
メキシコで最初のHSで,いままで対象にならなかった凝灰岩が認定された。採掘の歴史は,16世紀のスペイン植民地時代までさかのぼる。19世紀後半には英国コーンウォールから技術者と資本家が来て採掘するようになった。現在は火薬を用い,ハンマーやバールなどの手作業で,60-80cmのブロックとして切り出している。建造物として,16世紀建立のサンタ・ベラクルス教会,メキシコ革命100年記念で1910年建立のイタルゴ州都の時計塔があげられる。産業の歴史では,アコスタ銀鉱山の蒸気機関動力舎がある。
5 SDGsに絡めて
2015年9月国連は持続可能な開発目標(SDGs)を採択した。そこでは17の目標と169のターゲットを定めた。Gill(2017)は, 17の目標と地質学諸分野の役割を整理した。
例 「鉱物岩石分野」では何が求められるか。鉱物岩石資源の同定と開発が求められる。製品の原料となる鉱床,建材原石,ガラス材料の開発である。従来の資源探査に加えて,専門家は地質学がSDGsにどう貢献するかの説明責任がある。すなわち,開発に加え持続可能性を説明する。