一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R7:岩石・鉱物・鉱床 (資源地質学会 との共催 セッション)

2024年9月13日(金) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R7-P-10] 熊本市東方木山地域に産する超苦鉄質岩類の岩石学

西尾 成道1、*石丸 聡子2 (1. 熊本大学・理、2. 熊本大学・院自然)

キーワード:蛇紋岩、ダナイト、クロムスピネル、木山変成岩

熊本県は九州中央に位置し,県中央部の中央構造線の西方延長とみなされる臼杵–八代構造線を挟んで,南側に黒瀬川構造帯,北側に肥後変成帯といった先白亜紀変成岩類が広く分布している(小山内ほか,2014)。この他にも,木山変成岩や木の葉変成岩といった小規模な変成岩も確認されており,木山変成岩類は,変成鉱物組合せや結晶片岩中の白雲母の同位体年代測定により,三郡–蓮華変成岩と同一の起源をもつと判断されている(樺島ほか,1995)。この木山変成岩は,変成度の異なる東部岩体(藍閃石片岩相)と西部岩体(緑れん石角閃岩相)に区分され,その境界部に小規模な蛇紋岩を挟むことが知られていたが(坂野,1963;山本,1964),その岩石学的特徴については蛇紋岩化・風化の程度が激しく,詳細な記載がされていないままであった。我々は,熊本市東方の上益城郡益城町下陳地域での現地調査で試料採集をおこなった。露頭では,蛇紋岩は風化して茶褐色を呈し非常に脆いが,クロムスピネルに富むダナイト質のものが観察された。クロムスピネルの化学組成は,超苦鉄質岩の形成過程や形成場推定に有用であり,この蛇紋岩の記載をおこなうことで蛇紋岩を伴う木山変成岩の帰属に関する議論が深まることが期待される。
現地調査で採集したのは,露頭に産する風化したダナイトと,露頭の脇を流れる小川で風化の程度が比較的小さいウェールライトとダナイトである。ダナイト,ウェールライトともにカンラン石は残存していない。ウェールライト中の単斜輝石のMg# (= Mg/(Mg + Fe2+) 原子比) は0.85-0.87でAl2O3を1.8-2.7 wt.%含む。風化の激しいダナイト中であっても,クロムスピネルは三価の鉄の含有量が低く (Fe3+/(Cr + Al + Fe3+) < 0.10) 火成岩的な組成を保持している(Mg# = 0.46-0.55, Cr/(Cr + Al) = 0.86-0.87)。クロムスピネル中に角閃石包有物(パーガス閃石)が観察される。鉄–ニッケル合金を少量含む。ウェールライト中の不透明鉱物は三価の鉄の含有量が高く(Fe3+/(Cr + Al + Fe3+) > 0.83),(クロム)磁鉄鉱である。鉱物組合せとクロムスピネルの化学組成から,木山変成岩に伴う蛇紋岩は沈み込み帯で形成された結晶集積岩であると推定される。