2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R8: Metamorphic rocks and tectonics

Thu. Sep 12, 2024 3:30 PM - 6:00 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Yui Kouketsu(Nagoya University), Shunsuke Endo

4:15 PM - 4:30 PM

[R8-04] Compositional heterogeneity of garnet in garnet-biotite felsic granulite, Czech Republic

*Daisuke NAKAMURA1, Yuuka FUJIMURA1, Yuuki KODERA1 (1. Okayama University)

Keywords:Garnet

チェコ共和国の東部に位置するHorni Bory採石場には、ザクロ石と黒雲母に富む黒色の珪長質グラニュライトが広く産し、その中に塊状やレンズ状、層状のかんらん岩や輝岩が産する。今回、その珪長質グラニュライトを調べたところ、ザクロ石に著しい化学組成不均質が確認されたので、その記載岩石学的特徴を報告し、そこから得られる元素拡散に関する情報と地質学的意義をまとめる。
 Horni Bory採石場はボヘミア地塊内に位置し、含まれる輝岩からは超高圧条件(約4 GPa)の変成作用が記録されており(Naemura et al., 2009: JMPS 104, 168-175)、本研究地域は、モルダヌビア帯のクフェールユニットに属すると考えられる。研究した試料はザクロ石と黒雲母に著しく富むものの、クフェールユニットに産する一般的な珪長質グラニュライトと同様の鉱物組合せ(ザクロ石+黒雲母+藍晶石/珪線石+斜長石+カリ長石+石英+ルチル+イルメナイト+燐灰石等)を持つ。その試料に産するザクロ石粒子の大部分は直径1mmほどで包有物をあまり多くは含まないが、中には直径1.6mmを超える比較的大きいザクロ石粒子が産し、そのザクロ石粒子は包有物に富むポイキロブラスティクな組織を持つ。
 今回は一つの薄片内に分布する合計24粒子のザクロ石を線状に分析し、それらの組成プロファイル図を作成した。なお、それらの代表的なものを図に示している。多くのザクロ石粒子は中心部から縁辺部近傍まで、均一なCa含有量を持つが、そのCa含有量は粒子によって大きく異なり、XCa [= Ca/(Fe + Mn + Mg + Ca)]が0.12から0.26までの幅がある(図)。またMg# [= 100 Mg/(Fe + Mg)]にもザクロ石の中心部での顕著な違いがあり(Mg# = 23~35)、見かけ上、Mg#が縁辺部方向へ増加する昇温型累帯構造を示す粒子と縁辺部方向へMg#が減少する後退型累帯構造を持つ粒子がある。また、Mg#の値は粒子の最外縁部から0.1mmほど内側において粒子間で一致する傾向がある。
 以上のザクロ石の組成上の特徴は次の二つのことを示唆する。1)ザクロ石中のCa含有量はその核形成と成長の間、局所的な組成を反映した量を維持したまま変化しなかった。2)Mg#に関しては、個々のザクロ石の核形成の際に粒子間での著しい違いがあったが、その後の成長過程で粒子間での違いが緩和されるように組成が変化した。1)のことは、Caの拡散がザクロ石内で遅いだけでなく、粒界においても遅く、ザクロ石が成長する間も粒子間でのCa含有量の差を解消することが出来なかったことを意味する。一方、2)のことは、ザクロ石の核形成時には局所的な環境を反映したMg#を持ったザクロ石が形成されたが、その後の成長過程では粒界でのFe, Mgの拡散が比較的速くなり粒子間でのMg#の違いを解消するようなったことを示している。しかし、個々のザクロ石粒子内にはMg#の違いがあり、そうした組成差を解消できるほどザクロ石内でのFe, Mgの拡散は速くなかったとも言える。同様のザクロ石の組成不均質は同じクフェールユニットに属するNové Dvoryザクロ石かんらん岩に伴われるエクロジャイト中でも見つかっており(Itami et al., 2022; JMPS 117)、少なくともクフェールユニットの一部の岩石ではザクロ石中のMg#の違いを解消できないほど著しく短い高温状態の保持時間しかなかったのだろう。また、ボヘミア地塊南部のクフェールユニットに産する珪長質グラニュライト中に昇温型累帯構造を持つザクロ石が存在し、その変成温度は1000℃を超えている(内藤他, 2024; 岩石鉱物科学 53)という結果も上記の考えを支持する。
R8-04