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[R8-09] 愛知県新城地域の中央構造線沿いに分布する領家帯マイロナイトの構造岩石学的特徴
キーワード:マイロナイト、中央構造線、領家帯、断層岩
愛知県東三河地域新城市の中央構造線(MTL)周辺には,内帯の領家変成岩類から深成岩類,外帯の三波川変成岩類,さらにこれらの基盤岩類を覆う設楽層群などが分布する複雑な地質である.長野県,静岡県や三重県と同様に本地域のMTL沿いには断層岩が見られるが、本地域の断層岩は,ほとんどカタクレーサイトでありマイロナイトについては愛知県新城市鳳来町付近で確認されている程度であり,詳細な構造岩石学的研究は他の地域と比較して報告例はほとんどない.今回,新城市桜淵公園付近で連続したマイロナイトの露頭を確認した.この露頭は中央構造線沿いで最も南西側に位置する.本研究では,偏光顕微鏡による微細構造観察及びSEM‒EBSDシステムによる石英の結晶方位測定,さらに年代測定を行い,変形時の温度条件,剪断センス及び原岩について検討を行った.本地域のマイロナイトは露頭では緑白色を呈し,白い斑点状の斜長石粒子が特徴的な鹿塩マイロナイト様である.主な構成鉱物は石英,斜長石,黒雲母であり,その他カリ長石,褐簾石,ジルコンが含まれるトーナル岩質である.微細組織は,粗粒な斜長石の残晶からなる典型的なポーフィロクラスト状組織と斜長石の残晶と石英のストレインシャドウからなる非対称組織が認められる.石英のc軸ファブリックは,変形時の温度が比較的中温時に形成されるY軸集中のパターンを示す.降温期の変形を示す斜長石―石英の残晶組織との組み合わせによると,350–450℃の降温期に塑性剪断変形して形成されたと推定される.さらに定方位サンプルの研磨薄片観察により剪断センスを調べたところ他地域で報告されている左ずれではない右ずれを示した.以上の結果をもとに三河地域の地域的な構造岩石的特徴を他の地域と比較しつつ考察する.