一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

口頭講演

S1: 火成作用のダイナミクス (スペシャルセッション)

2024年9月12日(木) 10:00 〜 12:00 ESホール (東山キャンパス)

座長:吉村 俊平(北海道大学)、萩原 雄貴(海洋研究開発機構)、浜田 盛久(海洋研究開発機構)

10:55 〜 11:10

[S1-04] 非噴出珪長質マグマ中のメルトの含水量と圧力:花崗岩に含まれるジルコン中メルト包有物の均質化実験とSEM-EDS分析からの制約

「発表賞エントリー」

*川島 泰地1、下岡 和也2、福井 堂子1、斉藤 哲1 (1. 愛媛大、2. 関西学院大)

キーワード:非噴出珪長質マグマ、含水量、結晶化圧力、ジルコン中メルト包有物

花崗岩類は地殻内で固結した非噴出珪長質マグマに相当する。本研究では花崗岩類に普遍的に含まれる鉱物であるジルコン中のメルト包有物を用いて、花崗岩質マグマ中のメルトの含水量とジルコン結晶化圧力を見積もった。研究対象は西南日本の屋代島に産する白亜紀蒲野花崗閃緑岩である。ジルコン中メルト包有物はマグマ冷却中の結晶化により不均質な多相包有物となっているため、ピストンシリンダー型高温高圧装置を用いた均質化実験を行った。均質化実験後のジルコン中メルト包有物についてSEM-EDS分析をおこなったところ、メルト包有物は高い含水量(6.4 ~ 11.3 wt%)と高いSiO2含有量(76 ~ 78 wt%, 主要元素totalを100%にノーマライズした値)を示す。このことから、ジルコンは結晶成長時に分化した含水メルトを包有したものと考えられる。近年提案されたMagMaTaB地質圧力計を適用したところ、563 ~ 266 MPaの圧力が計算された。これらの圧力はジルコンが結晶化した際の圧力に相当すると解釈できる。メルト包有物組成から得られた含水量と圧力は、含水量-圧力図上において、ハプロ花崗岩メルトの含水飽和曲線に沿ってプロットされる。このことから、ジルコンが包有した際の花崗岩質マグマ中のメルトは、ほぼ含水飽和状態であったと考えられる。本研究結果から、蒲野花崗閃緑岩中のジルコン中メルト包有物は、マグマが深部地殻へ貫入(およそ563 ~ 500 MPa)してから最終的に固結(およそ266 MPa)するまでの広い範囲の圧力を記録していると考えられる。