3:50 PM - 4:05 PM
[S3-02] Deformation-induced crystallographic-preferred orientation of ε-FeOOH
Keywords:Crystallographic-preferred orientation, Seismic anisotropy, ε-FeOOH
地球下部マントル上部のスラブ近傍には、ブリッジマナイトなどの無水の下部マントル主要鉱物によっては説明できない地震波異方性が存在する(Lynner and Long, 2015)。高圧含水鉱物H相(MgSiO2(OH)2)は、マントルの岩石がスラブによって持ち込まれた水と反応することにより生成すると考えられるうえ、大きな単結晶弾性異方性を持つことから(Tsuchiya and Mookherjee, 2015)、観測される地震波異方性の成因として有力な候補である。本研究では、高圧含水鉱物H相と同一結晶構造を持つアナログ物質でより低圧で安定なε-FeOOHの結晶選択配向を高温高圧変形実験により決定し、これに基づいて下部マントル上部の地震波異方性の成因を明らかにすることを目指す。
変形実験はSPring-8、BL04B1設置のD111型装置を用いて行った(西原他, 2020)。12 GPa, 700 ºCで合成したε-FeOOHの粉末を成型したペレット、または粉末をさらに12 GPa, 600 ºCで焼結したものを実験に用いた。先端5 mmのアンビル、一辺10 mmの圧力媒体を用いて、圧力12 GPa、温度500−700 ºCで歪速度一定の一軸圧縮、一軸引張および単純剪断変形実験を行なった。回収試料の断面をSEM-EBSDにより分析し、結晶選択配向を決定した。一部の実験では、~60 keVの放射光単色X線を用いたX線その場観察を行い、変形中の試料の歪と選択配向の変化を決定した。
一軸圧縮変形実験の回収試料では[010]が圧縮軸方向に配列していることが確認された。一軸引張実験では加圧時の圧縮により形成された[010]の軸方向への集中が引張変形の進行とともに弱まり、代わって[001]が引張軸に集中し始めることが分かった。単純剪断変形実験では、剪断面法線方向に[010]が、剪断方向に[001]が集中することが観察された。以上の結果から、実験条件下でのε-FeOOHのすべり系が(010)[001]であることが示唆される。下部マントル上部の条件下で水平方向の剪断変形を受けたH相は、VSV > VSH(VSV、VSHはそれぞれ垂直方向と水平方向に振動するS波の速度)を示し、海溝と平行に振動するS波が高速となる偏向異方性が生じる可能性がある。
Lynner and Long (2015) J. Geophys. Int., 201, 1545-1552.
西原 他 (2020) 高圧力の科学と技術, 30, 78-84.
Tsuchiya and Mookherjee (2015) Sci. Rep., 5, 15534.
変形実験はSPring-8、BL04B1設置のD111型装置を用いて行った(西原他, 2020)。12 GPa, 700 ºCで合成したε-FeOOHの粉末を成型したペレット、または粉末をさらに12 GPa, 600 ºCで焼結したものを実験に用いた。先端5 mmのアンビル、一辺10 mmの圧力媒体を用いて、圧力12 GPa、温度500−700 ºCで歪速度一定の一軸圧縮、一軸引張および単純剪断変形実験を行なった。回収試料の断面をSEM-EBSDにより分析し、結晶選択配向を決定した。一部の実験では、~60 keVの放射光単色X線を用いたX線その場観察を行い、変形中の試料の歪と選択配向の変化を決定した。
一軸圧縮変形実験の回収試料では[010]が圧縮軸方向に配列していることが確認された。一軸引張実験では加圧時の圧縮により形成された[010]の軸方向への集中が引張変形の進行とともに弱まり、代わって[001]が引張軸に集中し始めることが分かった。単純剪断変形実験では、剪断面法線方向に[010]が、剪断方向に[001]が集中することが観察された。以上の結果から、実験条件下でのε-FeOOHのすべり系が(010)[001]であることが示唆される。下部マントル上部の条件下で水平方向の剪断変形を受けたH相は、VSV > VSH(VSV、VSHはそれぞれ垂直方向と水平方向に振動するS波の速度)を示し、海溝と平行に振動するS波が高速となる偏向異方性が生じる可能性がある。
Lynner and Long (2015) J. Geophys. Int., 201, 1545-1552.
西原 他 (2020) 高圧力の科学と技術, 30, 78-84.
Tsuchiya and Mookherjee (2015) Sci. Rep., 5, 15534.