一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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S3:マントル・地殻のレオロジーと物質移動(スペシャルセッション)

2024年9月12日(木) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[S3-P-08] 飛騨変成帯に産出する花崗岩マイロナイトの変形微細構造

「発表賞エントリー」

*堀江 正陽1、道林 克禎1 (1. 名古屋大・院環境)

キーワード:花崗岩マイロナイト、変形微細構造、結晶方位ファブリック、飛騨変成帯

大陸地塊の断片である飛騨変成帯には花崗岩や片麻岩起源のマイロナイト帯が富山県〜岐阜県において分布し、中生代前期に活動した延性剪断帯とみなされている(Takehara & Horie, 2019)。飛騨変成帯のマイロナイトの微細構造を詳細に調べることで、大陸地殻のレオロジー及び剪断帯の形成史に関する情報が取得できる(高木・原, 1994)。しかしながら、飛騨変成帯の延性剪断帯について微細構造に着目した研究は少なく(高木・原, 1994)、流動特性および剪断帯の形成プロセスに関する理解が進んでいない。そこで本研究では、飛騨変成帯南西部の花崗岩マイロナイトの微細構造に着目し、その流動特性とマイロナイトを形成した延性剪断帯の形成条件を明らかにすることを目的とした。岐阜県飛騨市の神岡地域と宮川地域についてマイロナイトの露頭調査と岩石試料を採取した。マイロナイトの岩石試料は面構造に垂直、線構造に水平な面で薄片を作成し、偏光顕微鏡を用いて微細構造の観察を行った。また、SEM-EBSD法によってマイロナイトの結晶方位を測定し、MATLAB MTEX Toolboxを用いて石英の結晶方位ファブリック並びに粒径と粒面積を解析した。薄片観察の結果、宮川地域のマイロナイトでは石英がプール状に密集した多結晶体として基質部に存在し、長石が主にポーフィロクラストの形態で確認された。一方神岡地域では、石英がリボン状に伸長した多結晶体を形成し、長石の再結晶粒子の集合体が普遍的に見られた。またSEM-EBSD法の結果、宮川地域のマイロナイトでは全サンプルにおいて石英の柱面a軸滑りを示唆する結晶方位ファブリック(Y-maxima)が確認された。神岡地域では、Y-maximaの他に柱面c軸滑りを示唆する単集中(X-maxima)及びランダムなファブリックが測定された。さらに石英の粒径・粒子面積のヒストグラムの比較を行ったところ、神岡地域の方が、数の少ない粗粒側の粒子において全体に占める面積比が大きい傾向が強かった。 本発表では微細構造、結晶方位、粒径及び粒子面積の解析結果から、宮川地域と神岡地域での花崗岩マイロナイトの変形メカニズム及び変形環境について議論する。さらに両地域の微細構造、変形特性を比較し、各地域の剪断帯の差異について考察する。
■参考文献
高木秀雄, 原崇, 1994, 飛騨地帯の延性剪断帯の運動像とテクトニクス. 地質学雑誌, 100, 931-950.
Takehara, M., Horie, K. 2019, U–Pb zircon geochronology of the Hida gneiss and granites in the Kamioka area, Hida Belt. Island Arc, e12303.