第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

先端歯学シンポジウム

「エキスパート研究の承継」

2023年9月17日(日) 18:00 〜 19:30 A会場 (百周年講堂(本館7F))

座長:石丸 直澄(徳大 院医歯薬 口腔分子病態)、樋田 京子(北大 院歯 血管生物分子病理)

18:00 〜 18:25

[AD-01] 歯の発生における血管新生と象牙質形成のカップリング

〇高橋 智子1、久保田 義顕1 (1. 慶應大)

キーワード:象牙が細胞、血管新生、血管内皮成長因子

血管新生は新たな血管ネットワークをつくる重要な形態形成現象の1つであり、慢性炎症や悪性腫瘍の進展においても重要な役割を担っていることが報告されている。近年、血管新生と組織の関連性について、骨では血管のサブタイプのひとつが骨成長に関わる重要な役割を担っていることが明らかになり、骨の形成・維持過程の細胞・分子メカニズムの理解が飛躍的に進んでいる。一方で、歯は身体の中で最も硬い組織であることから骨で適用された組織学的、遺伝学的なアプローチを用いることが困難なため、歯の発生における正確な分子メカニズムは不明のままであった。このような背景の中、本研究では独自開発技術を用いて従来の硬組織脱灰法を最適化したことにより、歯髄血管の高解像度3次元可視化に成功した。次に血管新生に必須であることが報告されている血管内皮成長因子(Vascular endothelial growth factor : VEGF)とその受容体(Vascular endothelial growth factor receptor : VEGFR)に着目したところ、歯髄においてVEGFは象牙芽細胞に発現していることや、象牙芽細胞特異的にVEGFを欠損したマウス(Osx-CreERT2Vegfaflox/flox)と血管内皮特異的にVEGFRを欠損したマウス(Cdh5-BAC-CreERT2Vegfr2flox/flox)の両者において象牙質の形成不全や疎な血管形成を認めることが明らかになった。さらに組織培養実験により、歯髄内の血管は酸素や栄養素を供給するだけでなく、複数の血管内皮由来パラクライン因子(アンジオクライン因子)の供給によっても象牙質の形成に貢献していることが示唆された。以上のことから歯髄血管の可視化に成功したことにより、歯の石灰化機序に関わる新たな血管のサブタイプを初めて明らかにした。