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[AD-02] がん微小環境における細胞老化の新機能
キーワード:細胞老化、SASP、がん
がんは加齢と伴に罹患率が上昇する加齢性疾患の一つであり、がんの発症には遺伝子の変異と伴に、細胞の老化が関与していることが知られている(Loo et al., Cancer Sci., 2020)。様々な発がんストレスによって老化した細胞においては、炎症性タンパク質や細胞外小胞(エクソソーム)などを分泌するSASP(senescence-associated secretory phenotype)という表現型が観察される(Takahashi et al., Nature Cell Biol., 2006; Takahashi et al., Nature Commun., 2017; Misawa et al., Int. J. Mol. Sci., 2023)。細胞外へと分泌されたSASP因子は慢性炎症を引き起こし、加齢性疾患の発症に寄与することが近年明らかになりつつある。私たちはこれまでに老化細胞でSASPがおこる分子機構の解析を行い、細胞質核酸を介した自然免疫応答の活性化(Takahashi et al., Nature Commun., 2018; Sugawara et al., Commun. Biol., 2022)や、エピゲノムの異常(Takahashi et al., Mol. Cell, 2012; Miyata et al., PNAS, 2021)が、重要であることを明らかにしてきた。さらに、間質の老化細胞が分泌するSASP因子の中には、微小環境を改変することでがんの発症に寄与することを見出した(Igarashi et al., Nature Commun., 2022)。このように、老化細胞が分泌するSASP因子が加齢に伴う発がんに関与する可能性が高いことから、今後、老化細胞やSASPを標的とした新しいがんの治療戦略へと繋げることを目指している。