第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

先端歯学シンポジウム

「エキスパート研究の承継」

2023年9月17日(日) 18:00 〜 19:30 A会場 (百周年講堂(本館7F))

座長:石丸 直澄(徳大 院医歯薬 口腔分子病態)、樋田 京子(北大 院歯 血管生物分子病理)

18:50 〜 19:25

[AD-03] 口腔の免疫制御機構 〜共刺激分子研究から〜

〇東 みゆき1 (1. 医科歯科大 院医歯 分子免疫)

キーワード:共刺激分子、がん免疫、免疫制御

半世紀前に、なんだかあやしい治療だと思われてきた癌免疫療法は、今日では、外科療法・放射線療法・化学療法に並ぶ第4の柱のがん治療法として確立されつつある。演者は、歯学部卒業後の大学院研究で、キラーT細胞の機能をどうにかパワーアップできないかと癌免疫研究に取り組み、様々な偶然と必然を経て、 Tリンパ球に発現する膜表面機能分子CD28とそのリガンド分子であるCD86に出会うことになった。共刺激分子と呼ばれる分子群で、 CD28-B7 family に代表される。共刺激分子には、免疫応答増強に働く正の共刺激と免疫抑制に働く負の共刺激が存在し、分子発現量や発現のタイミング、リガンドとの親和性などの繊細な制御機構下で、免疫応答を巧みにコントロールしている。負の共刺激分子の代表格は、 CTLA-4と PD-1であるが、今日では免疫チェックポイント分子と呼ばれ、これら分子を標的とした抗体医薬(生物学的製剤)は、口腔癌を含むがん免疫治療薬として臨床応用されるに至っている。癌のみならず、口腔粘膜上皮や樹状細胞、マクロファージに誘導される PD-1のリガンド分子は、粘膜炎症や歯周病の制御に関与している。この研究分野は、基礎研究が臨床応用につながり、さらに臨床応用の結果が基礎研究にフィードバックされメカニズム解析が進み、さらにより効果的な治療法開発へと繋がっていっている。本講演では、口腔の免疫制御機構に注目しながら、演者の歩んできた「共刺激分子研究」および「口腔免疫研究」の一端を紹介する。