9:23 AM - 9:48 AM
[IRS-03] Effect of experimental conditions on chew and swallow in vivo animal model
Keywords:摂食嚥下障害、ENaC、ASIC3
加齢や種々の疾患によってもたらされる摂食嚥下障害は,ことに高齢者において生命を脅かす問題となる.本研究では,摂食嚥下障害の主たる原因疾患となる脳血管疾患に伴う咀嚼嚥下運動不全や嚥下反射惹起遅延などの病態がどのようなメカニズムによって引き起こされるかについてモデル動物を用いて検討した.脳血管疾患に伴う摂食嚥下障害モデルのひとつとして用いられる中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルや総頸動脈結紮モデル(CCAO)では,一貫した嚥下障害を導くことが出来なかった.脳血管疾患モデルにおけるこれまでの知見―嚥下反射誘発遅延や運動パターンの変化―は,手術手技によるところが大きいことが示唆された.一方,臨床において認められる筋萎縮モデルを作成して長期的な動作解析を行ったところ,一側の筋萎縮のみでは明らかな咀嚼嚥下障害をもたらさなかった.ヒトと動物の摂食嚥下運動に関わる神経筋機構や可塑性の違いが予想され,今後も追及すべきテーマと考えている.嚥下反射惹起遅延が唾液分泌量低下によるものと考えて,末梢の唾液分泌を枯渇化する目的でメチルアトロピン(1 mg/kg,iv)投与下にて,蒸留水,NaCl(0.154 M),KCl(0.120 M)水溶液の微量喉頭滴下(3 ml)による嚥下反射誘発回数を比較したところ,それぞれの変化は認められなかった.さらにKCl誘発嚥下回数は蒸留水に比して多く,ATP感受性Kチャネルのagonist,antagonistの投与によりそれぞれ促進,抑制が認められたことから,KCl誘発嚥下に関わる受容機構の一端が解明された.加えて,我々がこれまで解明してきた機械刺激誘発嚥下の候補受容体であるENaC,炭酸刺激誘発嚥下の候補受容体であるASIC3を含めて,加齢に伴う嚥下反射惹起遅延とこれらの受容体の発現変化を追ってみたい.