第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

メインシンポジウム1

「感覚研究のフロンティア」

2023年9月16日(土) 15:50 〜 17:20 A会場 (百周年講堂(本館7F))

座長:篠田 雅路(日大 歯 生理)

16:50 〜 17:20

[MS1-03] 薬剤性味覚障害発症の分子メカニズム

〇重村 憲徳1,2 (1. 九大 院歯 口腔機能解析、2. 九大 五感応用デバイス研究開発セ)

キーワード:味覚、味覚受容体、薬剤性味覚障害

味覚は、食物に含まれる栄養物質の取捨選択を担う重要な口腔感覚である。また、この味覚情報は唾液分泌、咀嚼・嚥下運動の調節、消化吸収調節にも関与し、近年では口腔以外の脳、腸管や気管など様々な臓器でも味覚受容体を介して異なる機能を発揮していることも明らかになってきた。これらのことから、加齢や疾病などで味覚に異常をきたすことは、単なる感覚機能の障害にとどまらず、摂食量の低下や食事への嫌悪などからフレイルといった低栄養状態や社会的な楽しみの減少を招くことで、日常生活動作や生活の質(QOL)にも大きな影響を及ぼす可能性も考えられる。しかし、味覚異常の原因は多岐にわたることから、有効な治療法は確立されていないのが現状である。そこで私たちは、味覚障害の分子基盤の解明とその理解に基づく新たな予防・治療手段の開発を目指すことを目標として、味覚異常発症の主な原因とされる薬剤誘発性味覚障害 [厚労省の平成23年重篤副作用疾患別対応マニュアルでは味覚障害を誘発する薬剤が約300種類掲載] に着目して解析を行なった。本研究では、様々な薬剤(抗がん剤、骨粗鬆症治療薬ビスフォスホネート、抗不整脈薬フレイカイニド、鎮痛剤ジクロフェナクナトリウムなど)を投与することによる味覚の変化について、哺乳類のモデル動物であるマウスを用いた分子生物学的解析、味溶液摂取行動応答、味神経応答解析、味覚受容体を強制発現させたHEK293培養細胞を利用したCa2+イメージング、味蕾オルガノイド培養法などを用いて解析を行った。本発表では、これまでに明らかになった薬剤性味覚障害発症の分子メカニズムについて紹介させて頂きたい。