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[O1-D-PM1-03] 頭頚部扁平上皮癌における染色体パッセンジャー複合体非依存的なBorealin-Survivin相互作用がもたらす新たな機能
キーワード:頭頸部扁平上皮癌、Chromosome passenger complex、がん代謝
細胞分裂進行を制御するタンパク質複合体であるChromosome Passenger Complex(CPC)はBorealin, Survivin, Aurora-B, INCENPの4つの構成因子よりなり、頭頚部扁平上皮癌を含めた様々ながんにおいて、高発現が報告されている。特にSurvivinの核内集積が予後不良と相関することが報告されてlいるものの、その生物学的意義は未だ明らかとなっていない。そこで、本研究では頭頸部扁平上皮癌において、Survivinの核内集積機構とその生物学的意義の解明を目的として解析を実施した。CPC構成因子のノックダウンによって、他の構成因子の不安定化が誘導されたことから、Survivinの核内蓄積には他のCPC構成因子の発現量が重要ではないかと仮説を立て、CPC構成因子の過剰発現を行なった。興味深いことに、Borealinの過剰発現によってSurvivinがタンパク質レベルで蓄積することを明らかにした。一方、Aurora-Bの過剰発現やSurvivinと結合できないBorealin変異体ではSurvivinの蓄積は認めなかった。 Survivinが細胞内のどこに蓄積するかを検討するため、タンパク質の分画を行ったところ、クロマチン分画にSurvivinの蓄積がみられた。クロマチンに蓄積したSurvivinの機能を解析したところ、細胞質に局在するSurvivinの既知の機能である薬剤耐性能には差はみられなかったが、解糖系の亢進が誘導されることを見出した。 以上より、頭頚部扁平上皮癌においてBorealinの過剰発現が引き金となり、Survivinの核内集積をもたらし、その相互作用依存的に解糖系を制御するという染色体パッセンジャー複合体非依存的なBorealin-Survivinの新たな機能が示唆された。