第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 発生・再生

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:00 D会場 (431講義室(4号館3F))

座長:山城 隆(阪大 院歯 矯正)

14:20 〜 14:30

[O2-D-PM1-01] FGF18シグナルは歯根形成を制御する

〇金 成学1、足立 礼孝1、吉本 由紀1、川島 伸之2、太田 正人3、井関 祥子1 (1. 医科歯科大 院医歯 分子発生・口腔組織、2. 医科歯科大 院医歯 歯髄生物、3. 日本女子大 家政 人間生活)

キーワード:Fgf18、線維芽細胞増殖因子、歯根形成

線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナルは、生体の様々な組織の形態形成に関与している。22種類あるリガンドのうち、Fgf18は頭蓋骨を含む多様な硬組織の成長と再生を制御しており、その発現は歯根形成時に上昇することが報告されているが、その発現パターンや機能については未だ解明されていない。歯根形成が開始する生後6日目のマウス歯胚にFGF18溶液に浸漬したヘパリンビーズを作用させて腎臓被膜下にて3週間培養したところ、PBSおよびFGF2ビーズと比較して歯根の伸長と歯周組織の形成促進が認められた。歯根形成におけるFgf18の発現は、歯根の伸長初期にはHertwig’s epithelial root sheath (HERS)に近い歯乳頭で、その後は歯根に隣接する歯小嚢で観察された。また、FGF18の受容体であるFgf receptor (Fgfr) 1, Fgfr2, Fgfr3は、形成期の歯根周囲の組織で時期および領域特異的に発現していた。FGF18の作用を調べるため、マウスのHERSや歯髄間葉組織から樹立された細胞株を用いて増殖と分化を調べた。その結果、二つの細胞増殖には差がなかったが、歯髄間葉細胞では、BMP2を加えた分化培地を用いた場合、FGF18は歯髄間葉細胞の増殖を抑制し、ALPの活性や骨芽細胞分化マーカーであるRunx2およびSp7の発現の低下傾向が認められた。腎臓被膜下移植後7日目のPBS とFGF2ビーズ群では、歯根部形成領域での骨芽細胞分化マーカーの発現が高く、硬組織形成が確認された。一方、FGF18ビーズ群では、骨芽細胞分化マーカーの発現が低く、硬組織形成も僅かで、歯根膜マーカーであるPeriostinが歯根形成領域で発現していた。これらの結果から、FGF18は歯周組織形成を制御することで、間接的に歯根の伸長を促進することが示唆された。