第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 神経1

2023年9月17日(日) 16:00 〜 16:40 D会場 (431講義室(4号館3F))

座長:岡本 圭一郎(新潟大 院医歯学 口腔生理)

16:20 〜 16:30

[O2-D-PM2-03] 島皮質parvalbumin陽性細胞→錐体細胞シナプスにおける長期増強による疼痛コントロール

〇小林 理美1,2、藤田 智史2、小林 真之1 (1. 日大 歯 薬理、2. 日大 歯 生物)

キーワード:Parvalbumin陽性細胞、島皮質、長期増強

長期増強(LTP)は,シナプス前細胞に繰り返し入力が起こることにより,シナプス後細胞の伝達効率が増強する現象であり,海馬など皮質の様々な領野で観察される。島皮質は側頭部に位置する高次脳領域で,口腔顔面領域からの痛覚情報を処理している。そこで,本研究では,興奮性出力細胞(PNs)を強力に抑制しているparvalbumin陽性細胞(PVNs)に着目し,島皮質のPVNs→PNsシナプスにLTPを起こし,PNsをより強力に制御することで,口腔顔面領域の侵害刺激に対する逃避行動が変化するか検証した。 実験には,parvalbumin-Cre遺伝子改変ラットに,channel rhodopsin-2(ChR2)と赤色蛍光タンパクを共発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV5-EF1α-Flex-hChR2(H134R)-mCherry;AAV)を感染させた動物(PV-Creラット)を使用した。 まず,PV-Creラットの島皮質急性脳スライス標本を作製し,ホールセル・パッチクランプ記録を行った。PVNsに対し,TBSに類似したプロトコールの青色光頻回刺激を行うと,PNsから記録された抑制性シナプス後電流は対照群と比較して増大し,長期的に維持された。次に,PV-Creラットの島皮質にAAVを注入すると同時に光刺激用ファイバーを留置し,頭部に固定装置を装着した行動実験モデルラットを作製した。行動実験モデルラットの頬に熱刺激を行うと,無刺激時と比較して逃避行動が増加し,熱刺激と共に青色光刺激を加えると,逃避行動が有意に減少した。また,逃避行動測定前に,島皮質に青色光頻回刺激を行うと,熱刺激と共に青色光刺激を行うことによって逃避行動はより強力に抑制された。以上の結果から,島皮質の抑制性シナプスにLTPを引き起こすことは,疼痛を効果的に緩和すると考えられる。