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[O2-E-AM1-06] ヌカシン耐性に関与する2つのABCトランスポーターの多型性の解明
キーワード:streptococcus mutans、バクテリオシン、ABCトランスポーター
【目的】Streptococcus mutans126株を用いて、Staphylococcus属が産生する抗菌性ペプチドであるヌカシンに対する感受性を検証した結果、多様性を認めた。本研究ではヌカシン耐性に関与する新規ABCトランスポーターMukFEGと既報のLctFEGに着目しこの多様性を示す理由について検証した。【方法】臨床分離株126株のS.mutansおよびUA159株を用いた。lctFEG/mukFEG欠損株作製はダブルクロスオーバー法による薬剤耐性遺伝子置換により欠損株および得られた変異株を用いた補完株を作製した。抗菌活性はDirect法で検証し、定量性PCR法にてヌカシン耐性遺伝子発現を検証した。ヌカシンは培養上清から弱陽イオン交換担体にて粗精製後、HPLCで精製した。【結果】S.mutans127株のヌカシンに対する感受性に多様性を認めたため、LctFEGとMukFEGのアミノ酸配列を検証した結果、ABCトランスポーターに規則性を持つ多型性を見出した。また、mukFEG上流にヌカシンと同タイプのムタシンK8合成関連領域(mukA-T)の有無を認めた。これらの多型性から127株は7タイプに分類され、各タイプと感受性に関連性が認められた。特に機能不全型LctFEG保有株では機能型MukFEGを保有し、一方で機能型LctF保有株では機能不全型MukFEGを保有する傾向が認められ、2つの遺伝子の相反性はmukA-Tの有無によることが明らかになった。【考察】ムタシンK8合成関連遺伝子の挿入により、既存の耐性因子の一部に変異を生じ、効率的にバクテリオシン耐性を獲得する可能性が明らかとなった。遺伝子挿入の有無による変異を生じる詳細なメカニズムについてはまだ不明であるが、本研究からバクテリオシン遺伝子領域の有無による耐性因子本体の多型が生じる新たな知見を見出した。