第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 微生物2

2023年9月17日(日) 10:10 〜 11:10 E会場 (441講義室(4号館4F))

座長:内藤 真理子(長大 院医歯薬 微生物)

10:10 〜 10:20

[O2-E-AM2-01] 独立主成分分析で明らかにしたStreptococcus pyogenesのモジュロン情報の有用性

〇広瀬 雄二郎1、杉山 真央1、川端 重忠1,2 (1. 阪大 院歯 微生物、2. 阪大 CiDER)

キーワード:Streptococcus pyogenes、モジュロン、転写調節ネットワーク

Streptococcus pyogenesはヒトの上気道や皮膚に常在するが、咽頭炎など比較的軽度の疾患から重篤な症状を呈す劇症型溶血性レンサ球菌感染症まで多様な感染症を惹き起こす。S. pyogenes は宿主環境に適応するために、転写調節ネットワークを駆使して生理的状態を変化させる。しかし、S. pyogenes における転写制御因子は40個以上も推定されており、根底にある転写調節ネットワークを多面的に捉えることは困難であった。
本研究では、S. pyogenes 血清型1型におけるRNA-seq解析データを公共のデータベースより収集し、独立主成分分析を実行した。S. pyogenes のモジュロン(複数の転写制御因子や環境要因が作用した結果、ともに挙動する遺伝子群)を世界で初めて同定し、データベース上に公開した(imodulondb.org)。さらに、得られた結果を過去のRNA-seq解析のデータ解釈に活用することで、「グルコースの多糖体であるマルトースおよびデキストリンの利用が、溶血毒素の発現に影響する」との仮説が得られた。実際に検証を行うと、菌がグルコースを利用する場合の溶血活性はストレプトリジンO依存的であるのに対し、マルトース利用ではストレプトリジンS依存的、デキストリン利用では両方の毒素が溶血活性に寄与することが明らかにした。さらには、モジュロンの転写活性を計算することにより、ストレプトリジンOをコードする遺伝子の発現上昇において、グルコースとデキストリンでは異なる転写調節ネットワークを利用していることが明らかとなった。