10:00 〜 10:10
[O3-D-AM2-02] インスリンはPI3K-PKB/AKtシグナル経路を介してラット島皮質抑制性シナプス伝達を促進する
キーワード:島皮質、インスリン、抑制性シナプス伝達
インスリンは神経機構の発達や可塑性に関与し、認知症やうつ病に関与していることが報告されている。しかし、大脳皮質においてインスリンが電気生理学的な神経活動の調節に関与しているかについては不明点が多い。本研究では、島皮質に発現する抑制性ニューロンの発火特性と錐体細胞(PN)への影響とその細胞内メカニズムについて、ホールセル・パッチクランプ法にて明らかにした。まず、fast-spikingニューロン(FSN)の発火特性に対するインスリンの効果を調べたところ、静止膜電位および入力抵抗の変化を認めなかったが、基電流を低下させ、発火頻度を増加させた。次にPNから微小IPSC(mIPSC)を記録したところ、振幅の変化なし発生頻度の増加を認めた。FSNとPNを同時に記録し、FSNに50 ms間隔で電流を注入することで活性化させ、IPSC(uIPSC)を記録したところ、インスリンはuIPSCの振幅を増大させ、一発目と二発目の振幅の比(PPR)を減少させた。また、インスリン受容体アンタゴニストであるS961、チロシンキナーゼ阻害薬のlavendustin Aの灌流投与によってインスリンによるuIPSCの振幅の増大とPPRの減少が抑制された。さらにPI3キナーゼ阻害薬のwortmannin、PKB/Akt阻害薬のdeguelinおよびAkt inhibitor VIIIの灌流投与によって、uIPSCの振幅の増大とPPRの減少が抑制された。一方、MAPK阻害薬のPD98059を灌流投与するとuIPSCの振幅が増大し、PPRの減少が確認された。したがって、インスリンは島皮質のFSNにおけるインスリン受容体に作用し、その下流のAkt/PKBを活性化することによってGABAの放出を増加させることが示唆された。