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[O3-E-PM1-05] 歯周病患者唾液中の酪酸による潜伏感染EBVの再活性化とEBVによる破骨細胞分化促進作用
キーワード:歯周病、EBウイルス、破骨細胞
【目的】 近年、EBVが歯周病や潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患の発症に関与するのでは、との興味深い報告が世界各国から蓄積している。宿主に感染し免疫機能の低下を引き起こすEBVの役割が注目されている。我々は、歯周病の進行とポケット中のEBV量とが相関すること、EBVが実際に歯肉のB細胞に感染していること等を報告してきた。しかし、歯周局所で潜伏感染EBVの再活性化がどのように誘導されうるのか、再活性化EBVが歯周病の発症にどのように関わっているのかに関してはよくわかっていない。そこで今回、唾液によるEBV再活性化の可能性と炎症性サイトカイン産生と破骨細胞分化に対するEBVの作用について検討した。 【結果】 質量分析により唾液中の短鎖脂肪酸を測定した結果、歯周病患者唾液中には酪酸、プロピオン酸及び酢酸が高濃度で存在し、その値は健常者と比較して優位に高かった。実際に、EBV潜伏感染細胞に歯周病患者の唾液を添加した結果、 EBVの再活性化因子BZLF1の発現とヒストンH3のアセチル化が誘導された。BZLF1発現量と唾液中の酪酸濃度との間にのみ有意な相関が認められた。さらにEBV は、歯周病患者で検出される量よりも少ない量でNF-κB を活性化、歯肉線維芽細胞からのIL-6 と IL-8 の産生を強く誘導するとともに、RANKL誘導性の破骨細胞形成を量依存的に増大させた。 【考察】 歯周病の発症に細菌の関与は必須であるものの、主な原因は宿主側にあり特に免疫機能の低下が重要な因子であるとの考えが広く認識されるようになった。本研究から、歯周病菌の代謝産物である唾液中の酪酸がEBVを再活性化すること、EBV が炎症性サイトカインの産生を誘導するとともに、破骨細胞形成も促進することが明らかとなり、これまで細菌感染のみでは説明が困難であった歯周病発症機序の解明に繋がる可能性が示唆された。