[P1-2-01] 乳酸の新規ヒストン修飾による骨芽細胞分化制御機構の解明
キーワード:lactylation、osteoblasts differentiation、p300
【目的】乳酸は、糖代謝の解糖系の駆動により乳酸脱水素酵素(LDH)Aを介して産生される代謝産物である。近年、ヒストンの新規修飾として乳酸による「ラクチル化」という転写制御の役割が発見され、遺伝子発現が制御される「エピジェネティクス」に重要な働きがあると考えられている。我々は、細胞内乳酸濃度が骨芽細胞分化に重要である事を報告してきた。そのため本研究では、ヒストンラクチル化による骨芽細胞の新たな分化機序の解明を目的とし、乳酸によるエネルギー代謝や酸化作用以外の「エピジェネティクスを介した骨代謝」という新たな機能の確立を目指す。 【方法】本研究では、未分化細胞としてマウス筋芽細胞株C2C12細胞にBMP-2を添加し、骨芽細胞様細胞へと分化する系を用いて解析を行った。骨芽細胞様細胞の分化をALP活性染色およびReal-time PCR法を用いて評価した。また、p300 siRNAを導入し遺伝子knockdownを行った。ヒストンラクチル化は、各細胞のヒストンタンパクの抽出を行った後、Westernblot法にて評価した。 【結果】高グルコース培地で培養されたC2C12細胞は、低グルコース培地と比較して、BMP-2 によって誘導される骨芽細胞分化、およびヒストンラクチル化が増加した。 また低グルコース培地に乳酸を添加すると骨芽細胞分化、およびヒストンラクチル化が回復した。さらに、LDH阻害剤であるOxamateおよびヒストンラクチル化の転写制御を行っている可能性のある酵素であるp300のsiRNAを導入したC2C12細胞では、骨芽細胞分化およびヒストンラクチル化が低下した。 【考察】これらの結果から、未分化細胞における骨芽細胞分化の促進にはヒストンラクチル化による遺伝子制御が重要な役割を果たし、乳酸産生の制御が骨代謝疾患の治療の新たな標的となる可能性が示唆された。