[P1-2-19] 分泌型白血球プロテアーゼインヒビターによる歯周組織破壊抑制作用の解析
キーワード:分泌型白血球プロテアーゼインヒビター、好中球エラスターゼ、歯周炎
【背景と目的】好中球エラスターゼはタンパク質分解酵素であり,好中球から漏出すると宿主組織を傷害する.一方,生体内では,エラスターゼの阻害因子として,分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)が準備されている.歯周炎罹患組織ではエラスターゼとSLPIのバランスが崩壊し,歯周組織が破壊されると考えられる.そこで,歯周炎罹患組織にSLPIを投与することで,歯周組織破壊が抑制されるとの仮説を立て,歯周炎モデルマウスを用いて検証を行った.【方法と結果】8週齢 BALB/cマウスの上顎第二臼歯を結紮し,歯周炎を誘発させた.次に,同マウスの口蓋歯肉にハミルトンシリンジを用いて1日1回,計7日間作製した組換え(r)SLPI(500 ng/ 5 μL)を局所投与した.8日目に組織サンプルを回収し,歯肉中のエラスターゼ活性を測定した.その結果,rSLPI投与群では,PBS投与群と比較して,歯肉中のエラスターゼ活性が有意に低下した.また,実体顕微鏡を用いて,マウス上顎骨第二臼歯周囲の歯槽骨吸収量を測定したところ,rSLPI投与群では,PBS添加群と比較して歯槽骨吸収量が有意に低値を示した.続いて,マウス上顎骨の凍結切片を作製し,第二臼歯周囲の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)陽性細胞数を算定した.その結果,rSLPI投与群におけるTRAP陽性細胞数は,PBS投与群と比べて有意に減少した.次に,マウス骨髄細胞を分離し,破骨細胞分化誘導因子およびrSLPI(1~10 μg/mL)の存在下で培養したところ,rSLPI添加群では,非添加群と比較して,TRAP陽性細胞数が有意に少なかった.【考察】rSLPIはエラスターゼ活性を阻害し,破骨細胞分化を抑制することで,歯周炎による歯周組織破壊を抑制する可能性が示唆された.