[P1-2-30] 尾静脈投与したStreptococcus mutansのラムノースーグルコース多糖類合成能がマウスの臓器へ及ぼす影響
キーワード:Streptococcus mutans、RGP、定着
齲蝕病原細菌の一つであるStreptococcus mutansは感染性心内膜炎など全身疾患にも関与していることが知られる。S. mutansは細胞壁の構成成分としてラムノースとグルコースからなる多糖類 (rhamnose-glucose polysaccharide; RGP)を有している。このRGPは菌体のストレス耐性やバイオフィルム形成に関与していることや、感染性心内膜炎における病原性に関与している可能性が知られているが、その役割については不明な点が多い。そこで我々はS. mutansをマウスに尾静脈投与した場合にS. mutansのRGP合成能がマウスの臓器に与える影響について検討した。本研究では、多糖類の主骨格であるラムノースポリマーへのグルコース側鎖の合成に関与している遺伝子rgpl (SMU833)を欠損させたS. mutans UA159 SMU833 mutant(SMU833-)株にウミシイタケ由来の発光遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子(renG)を組み込んだrenG発現S. mutans SMU833-株を作製した。renG発現S. mutans UA159株、renG発現S. mutans UA159 グルカン合成能変異株、renG発現S. mutans SMU833-株をそれぞれBALB/cマウスに尾静脈投与した。最終投与から2週間後に解剖し、採取した臓器のホモジネートにルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを添加し発光量を測定した。その結果、主に腎臓や脾臓で発光が確認された。また、腎臓における発光量はS. mutans UA159株に比較してS. mutans SMU833-株を投与したマウスで低くなった。これらの結果から、尾静脈投与されたS. mutansが腎臓にトラップされ定着する際に遺伝子rgplが関与している可能性が示唆された。