第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P1-2-40] 口腔扁平上皮癌における癌抑制遺伝子としてのEGR−1の機能解析

〇下拾石 雄大1,2、Nguyen Phuong Thao2、嶋 香織2、石田 喬之1、笹平 智則2 (1. 鹿大 院医歯 顎顔面外科、2. 鹿大 院医歯 口腔病理)

キーワード:口腔癌、EGR-1、癌抑制遺伝子

【背景・目的】口腔癌は我が国で毎年約8000人が罹患しているとされ、全がんの約1%を占める。組織型については90%が扁平上皮癌であるが、その発生、浸潤、転移のメカニズムについては不明な点が多い。また、多くの症例で外科的切除が行われるが、術後の口腔機能の低下や、顔貌の変化が大きく、早期発見やより低侵襲の治療が期待されている。本研究では、Zinc-fingerを持つ転写因子である初期応答遺伝子のEGR-1について口腔癌における機能解析を行い、がん抑制遺伝子としての可能性の検討を行った。【方法・結果】TCGA data setにおいて、EGR-1の発現が腫瘍組織では正常組織に比べて有意に低いことが示された。次に、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC3M3を用いてsi-RNAによる発現抑制により、WST-8 assayによる細胞増殖能、invasion assayによる浸潤能、wound healing assayによる遊走能の亢進を認めた。また、qRT-PCRにより遺伝子解析を行ったところ、細胞周期マーカー、MMPs、EMTマーカーについて有意な増加を認めた。一方でplasmidを用いてEGR-1の強発現細胞では、細胞増殖能、浸潤能、遊走能の有意な低下を認め、各マーカー遺伝子の発現も有意に減少した。加えてwestern Blot法で細胞周期調節因子の発現に有意な変化を認めた。さらに、臨床検体63症例を用いた免疫組織化学染色を行い、EGR-1発現の占める面積の割合を腫瘍胞巣と正常組織を比較したところ、腫瘍胞巣におけるEGR-1陽性細胞の面積割合が有意に減少した。【考察】本研究により、EGR-1は口腔癌においてがん抑制遺伝子として機能することが示唆された。今後はより詳細なシグナル経路解析や転移、微小環境との関連について動物実験を含めて行っていく予定である。(本研究に関して開示すべきCOIはありません)