[P1-2-43] 内分泌撹乱物質AhRリガンドB[a]PおよびFICZはCyp1a1シグナルを介して破骨細胞分化および骨代謝を制御する
キーワード:AhR、Cyp1a1、破骨細胞
【目的】ダイオキシン受容体として知られる転写因子aryl hydrocarbon receptor (AhR)は、様々な組織に発現がみられ、最近になって一部の免疫細胞にも高発現していることが明らかになってきている。これまでAhRがRANKLシグナルを介した破骨細胞形成においても重要であることが報告されているものの、破骨細胞における各種AhRリガンドによる破骨細胞分化や骨代謝への詳細な影響については未だ不明な点が多い。 【方法および結果】タバコ煙中に含まれるAhRアゴニストbenzo[a]pyrene (B[a]P)を野生型マウスへ経口投与した結果、下顎頭下骨部において破骨細胞の活性上昇による骨量の減少、AhR標的遺伝子の一つであるcytochrome P4501A1 (Cyp1a1)の発現上昇がみられた。一方でAhR欠損マウスへの投与では骨量や破骨細胞活性に変化を認めなかった。さらに、in vitroにおいてB[a]P刺激による骨髄細胞からの破骨細胞形成能を比較したところAhR欠損マウスと比較し、野生型マウスにおいて破骨細胞形成能の著しい上昇を認めた。次に内因性AhRリガンドの一つ6-formylindolo[3,2-b]carbazole (FICZ)をマウス変形性顎関節症モデルマウスに投与した結果、下顎頭表面の粗造感や過剰な破骨細胞集積、TUNEL陽性細胞のFICZ用量依存的な減少が認められた。変形性顎関節症モデルマウス下顎頭ではCyp1a1や分断化Caspase3の発現上昇を認めたもののFICZ投与により有意に発現が低下した。さらにin vitroにおいてFICZ添加により破骨細胞形成能及び骨吸収能の減少を認めた。 【結論】AhRリガンド刺激によるCyp1a1を介した経路が破骨細胞分化において重要な役割を果たし、骨代謝疾患における治療標的となることが示唆された。