[P1-2-44] 血管内皮細胞におけるSARS-CoV-2侵入機構の解析
キーワード:COVID-19、SARS-CoV-2、血管内皮細胞
【背景】重症COVID-19では血管内皮機能障害が特徴的であり,血管内皮細胞 (Endothelial cell: EC) へのSARS-CoV-2感染が示唆されてきたものの,感染の有無については未だ議論が続いている.その理由のひとつに,ECにおけるウイルス侵入機構が明らかになっていないことが挙げられる.【目的】本研究では,ECへのウイルス侵入に関与する分子を特定し,より詳細な分子機構を明らかにすることを目的とした.【方法・結果】SARS-CoV-2マウス馴化株を経鼻接種させた若齢/加齢マウスでは,加齢マウスでのみ著明な体重減少を認め,肺の病理組織学的所見は重症COVID-19肺のそれに類似していた.それぞれのマウス肺からECを単離し RNA-seqを実施したところ,ウイルス量は加齢マウスECで顕著に高かったが,ACE2やTMPRSS2の発現はほとんど認められなかった.一方,IRF7, RIG-Iなどのウイルス応答遺伝子の発現亢進がみられ,膜融合経路ではなくエンドサイトーシス経路によるECへのウイルス侵入の可能性が考えられた.さらに分子機構を解析した.先行報告のあるウイルス受容体のうち肺ECでも発現が認められた複数の遺伝子をsiRNAによりノックダウンしたところ,ウイルス量が減少し,それらがECのウイルス受容体として機能していることが示唆された.また,エンドサイトーシス阻害薬Xにより,ECのウイルス量が減少したことから,ある特定のエンドサイトーシス経路が関与していることが示唆された.今後より詳細な分子機構を明らかにし,ECへのSARS-CoV-2侵入とCOVID-19重症化の関係を検討する方針である. (本研究は北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所 澤洋文教授,シオノギ抗ウイルス薬研究部門,北海道大学医学研究院細胞生理学教室 大場雄介教授との共同研究である)