第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P1-2-45] 炎症部位を支配する侵害受容性三叉神経節ニューロンの過興奮に対するケルセチンの局所麻酔効果

〇指出 幸人1、武田 守1 (1. 麻布大 生命・環境 食品生理)

キーワード:ケルセチン、局所麻酔効果、三叉神経節ニューロン

[目的] 最近、我々はフィトケミカルであるケルセチンが侵害受容性三叉神経節(TG)ニューロンの興奮性を可逆的・濃度依存的に抑制し、局所麻酔薬と同等効果を持つ事を報告した (J Pain,2023)。本実験は炎症誘発部位へのケルセチン局所投与による侵害性機械刺激に対するTGニューロンの過興奮に対する抑制効果の有無を検討し、その効果を既存の局所麻酔薬と比較解析を行うことを目的とした。
[方法]  Wistar雄ラット(8週齢)をイソフルラン吸入麻酔しCFAを左側口髭部分に投与し炎症動物を作成した。翌日von Frey hairsを用いて逃避反射閾値の評価より炎症性痛覚過敏を確認した。三種混合麻酔処置後、タングステン記録電極をTGに刺入し、交流アンプとPower Labを用いて炎症誘発左側口髭部分へvon Frey hairsによる機械刺激(非侵害・侵害)を与え細胞外単一ユニットとして記録した。ケルセチンまたは1%リドカイン投与後のユニット放電頻度を経時的にヒストグラム作成により定量解析した。
[結果] CFA投与1日後、逃避反射閾値は投与前に比較して有意に低下した。ケルセチン1mM局所投与によってTGニューロンの侵害刺激に対する平均放電頻度は有意に抑制され、可逆的に回復した。1%リドカインにおいても可逆的な放電抑制効果が観察された。ケルセチン1mMの放電頻度に対する抑制率は1%リドカインよりも有意に強い効果が得られた。溶媒投与は無効であった。
[考察・結論] 本実験よりケルセチンの炎症組織への局所投与は侵害刺激に応じる侵害受容性一次ニューロンの過興奮性をNaチャネル阻害とKチャネルの活性化で可逆的に抑制することが示唆された。したがって、ケルセチンが局所麻酔薬の代替薬となり、臨床医療の現場における補完代替医療に貢献する可能性が推察された。
[利益相反] 利益相反状態にはありません.