[P1-2-46] ラクトシルセラミドによるタイトジャンクション構成因子クローディン-11の制御
キーワード:タイトジャンクション、クローディン-11、糖脂質
タイトジャンクションは細胞間接着装置の一つであり、体表、呼吸器、泌尿生殖器、消化管などの上皮細胞間に存在して、体内からの水の蒸散や体外からの異物の侵入を防ぎ、また細胞間の選択的な物質透過により効果的な消化吸収に寄与する。さらに体内で特殊な区画を形成することにより視覚、聴覚、生殖に重要である。タイトジャンクションの主な構成成分はクローディンファミリータンパク質である。近年、糖尿病性網膜症の発症機序の一つとして極長鎖脂肪酸をもつセラミドの低下によるタイトジャンクションの不安定化が報告されているが、クローディンタンパク質と脂質との関連については未解明な部分が多い。クローディンは4回膜貫通タンパク質であり、多量体を形成し、さらに細胞外のループ部分を介して向かいあう細胞のクローディンと結合することによりタイトジャンクションストランドを形成する。私たちはクローディンの多量体化と脂質との関係について、モデル系を用いて糖脂質の効果を検討した。多量体化の評価系を構築するにあたり、ユニークな細胞外ループを持つクローディン-11(他のクローディンに比べて細胞外ループが長く、保存されたSS結合以外にもSS結合をもつ)は多量体形成を観察しやすいと考えた。細胞に発現しているクローディン-11を化学架橋剤BS3により処理、可溶化後に還元アルキル化処理を行い電気泳動することにより多量体化状態を検出できることを見出した。この実験系を用いて糖脂質の生合成酵素を欠損させたHela細胞、糖脂質生合成阻害剤、糖脂質添加などを用いて架橋(多量体化)への影響を調べた。その結果、ラクトシルセラミドを添加した場合に多量体化が亢進することが示唆された。この結果から、糖脂質はクローディン-11の形成するタイトジャンクションを介して聴覚や生殖などの疾患に対する治療に応用できる可能性が考えられる。