第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P1-2-50] 酸性細胞外pHに反応する遺伝子の発現と生存期間との相関性

〇馬渡 琴織1,2、前田 豊信1、加藤 靖正1 (1. 奥羽大 歯 生化、2. 奥羽大 歯)

キーワード:細胞外環境、酸性細胞外pH、生存率

がん組織内の細胞外pHが酸性を示すことは古くから知られている。私達はこれまで、マウスB16-BL6メラノーマ細胞において、酸性細胞外pH (pHe)が浸潤転移を促進することを報告してきた。このB16-BL6細胞は、pHe 5.9までのpHeに対する反応性が良く、その影響を検討する良いモデルとなっている。そこで本研究では、cDNAマイクロアレイ法により、B16-BL6細胞において酸性pHeにより発現が変動した遺伝子を酸性pH誘導型遺伝子あるいは酸性pH抑制型遺伝子と規定し、それぞれ上位100遺伝子を抽出し、これらの遺伝子産物の発現レベルとがん患者の生存期間について、頭頸部扁平上皮癌の他7種のがん(メラノーマ、胃癌、肝癌、大腸癌、メラノーマ、乳癌、前立腺癌)を対象としてthe human protein atlasにより解析した。発現上昇(低下)に伴い生存期間が短縮(延長)した状態をヒットしたと定義し、8種のがんでヒット数をカウントした。マイクロアレイの結果、酸性pHe刺激で2倍以上に上昇(低下)した遺伝子数は、1445 (1168)で、その内訳は、pHe 6.8のみが342 (305)、pHe 5.9のみが388 (323)、両方のpHeでは715 (540)であった。ヒットした遺伝子数は、誘導34・抑制24であった。また、がんの種別のヒット数は、頭頸部扁平上皮癌では22(誘導10・抑制12)、大腸癌では20(誘導11・抑制9)、肺癌では20(誘導6・抑制14)、肝癌では17(誘導12・抑制5)、胃癌では14(誘導11・抑制3)、乳癌では13(誘導5・抑制8)、メラノーマでは11(誘導6・抑制5)、前立腺癌では4(誘導3・抑制1)、であった。頭頸部扁平上皮癌はpHeの低下と生存率の短縮との関連性が最も高かったが、前立腺癌はその関連性が低いことが示された。