第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-05] コウモリ類口蓋の多様化と口蓋裂様形態の形成メカニズム

〇目黒 史也1 (1. 筑波大 プレシジョン・メディスン開発研究セ)

キーワード:口蓋形成、進化発生学、コウモリ

哺乳類種の20%を占めるコウモリ類は,その多様な食性やエコロケーション能に応じて著しく多様化した顎顔面形態を呈することで知られている.なかでもコウモリ類の一部系統ではヒトの口蓋裂様の形態が自然状態で認められるという点は歯科医学的にも注目に値する.しかし,これまで歯科医学からこの問題に取り組んだ例は皆無である.また,その胚の希少性から,発生学的研究は殆ど進んでおらず,顎顔面領域の形態形成メカニズムについても殆ど報告がない.そこで,我々はコウモリ類の胎仔を用いた比較発生学的研究により,コウモリ類口蓋の多様化メカニズム解明を目指している.多様な形態を生み出す分子メカニズムを解明するとともに,全く新しい視点からヒト口唇口蓋裂の発症機序機序についての知見をもたらしうると期待している.現在我々は,口蓋を形成する骨のうちより吻側に位置する前上顎骨と上顎骨口蓋突起を主な研究対象とし,異なる口蓋裂様の形態を呈する2種のコウモリ(Vespertilo sinensis, Rhinolophus cornutus)と全く裂隙を形成しない1種(Cynopterus sphinx)を用いた研究を進めている.本発表では,前上顎骨と上顎骨形成予定部位における骨形成シグナルの発現部位や細胞増殖マーカーの3種間での比較,及び時系列的な形態変化について報告する.