第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P2-2-16] PRIPがM1 / M2マクロファージの分極化に与える影響についての検討

〇佐野 朋美1、Malaz Elsheikh1、溝上 顕子2、清島 保3、兼松 隆1 (1. 九大 院歯 口腔機能分子、2. 九大 院歯 OBT研究セ、3. 九大 院歯 口腔病理)

キーワード:マクロファージ、腫瘍微小環境、AKTシグナリング

【背景と目的】マクロファージは、PI3K/AKT/mTORシグナル経路を介して、M1型とM2型との分極化が調節されている。腫瘍微小環境におけるこの分極化調節の破綻によって、腫瘍の増殖や悪性化が進行することが明らかになってきた。本研究では、我々が見出したPI3K/AKTシグナリングを負に制御する分子PRIP(ヒトではPLCL)がマクロファージ分極化に与える影響を検討した。
【材料と方法】野生型(WT)とPrip欠損(KO)マウスの骨髄細胞をM-CSFで刺激しマクロファージ(M0)に分化させ、続いてM1マクロファージ(LPSとIFN-γで誘導)やM2マクロファージ(IL-4とIL-13で誘導)に分化誘導して、M1/M2分化割合を各マーカーで定量した。次に、PLCL発現レベルの異なる2種類の腎臓がん細胞とマクロファージ細胞株RAW264.7やWTとKOマウスの骨髄細胞由来マクロファージ(BMDM)とを共培養してM2マクロファージへの分極の程度を検討した。
【結果】WTとKOマウスの骨髄細胞のマクロファージ(M0)への分化に違いは見られなかった。一方、M1/M2誘導実験では、WTに比較してKOマウス由来BMDMでは、M1誘導は抑制されM2誘導が亢進した。RAW264.7を用いた実験では、高PLCL発現の腎臓がん細胞と比較して、低PLCL発現の腎臓がん細胞との共培養により、RAW264.7は高度にM2に誘導された。また、KOマウス由来のBMDMと腎臓がん細胞との共培養実験においても、PRIP (PLCL)の欠失によりM2誘導の割合が増加した。
【考察および結論】PRIPの発現によりPI3K/AKT経路の活性化が抑制される場合、M2マクロファージへの分極は負に調節される。これは腫瘍の増殖能亢進や転移能獲得を抑制し、これによって癌微小環境を抗腫瘍環境に維持していると考えられる。