第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P2-2-20] マクロライド系薬はマクロライド耐性肺炎球菌の炎症誘導能を減弱させる

〇土門 久哲1,2、平山 悟1、磯野 俊仁1、笹川 花梨1,3、滝澤 史雄1,3、前川 知樹1,2,3、寺尾 豊1,2 (1. 新潟大 院医歯 微生物、2. 新潟大 院医歯 高口研セ、3. 新潟大 院医歯 歯周診断・再建)

キーワード:肺炎、肺炎球菌、マクロライド

【目的】マクロライド系薬に耐性を示す肺炎球菌の検出率増加が社会的な問題となっている.しかしながら,マクロライド系薬は,依然として肺炎球菌感染症に有効であることも臨床報告されている.本研究では,肺炎球菌の炎症誘導能に及ぼすマクロライド系薬の影響を解析した.
【方法】マクロライド耐性肺炎球菌 NU4471株(MIC >1 mg/mL)に,アジスロマイシンもしくはエリスロマイシン(各5 μg/mL)を添加して増殖定常期まで培養し,上清を採取した.各上清をTHP-1細胞に添加して一定時間経過後,THP-1培養上清中の炎症性サイトカイン濃度をELISAで定量した.続いて,マクロライド系薬を添加した肺炎球菌におけるペプチドグリカン,リポタンパク質およびリポタイコ酸の生合成に関連する遺伝子群の転写についてreal-time PCRで解析した.さらに,Silkworm larvae plasma試薬およびTriton X-114二層抽出法を用いて,ペプチドグリカンとリポタンパク質産生に及ぼすマクロライド系薬の影響についてそれぞれ解析した.
【結果】マクロライド系薬を添加した肺炎球菌NU4471株の上清は,未添加群と比較し,THP-1細胞に対するTNF-α,IL-6およびIL-8誘導能が有意に低かった.同菌株にマクロライド系薬を添加したところ,ペプチドグリカン,リポタンパク質,およびリポタイコ酸の生合成に関連する複数の遺伝子の転写が有意に抑制された.さらに,マクロライド系薬添加群では,肺炎球菌NU4471株上清中のペプチドグリカン濃度および菌体内リポタンパク質の量が減少した.
【考察と結論】マクロライド系薬は,肺炎球菌における自然免疫活性化因子の産生を転写レベルで抑制することで,宿主細胞に対する炎症誘導能を減弱させることが示唆された.
会員外共同研究者:栁原克紀(長崎大),木村 征(しおかぜ医院)