第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P2-2-26] 口腔Enterococcus faecalisにおける病原性関連遺伝子群の比較解析

〇山中 幸1、才木 桂太郎1、田代 有美子1、石川 結子2、髙橋 幸裕1 (1. 日歯大 生命歯 微生物、2. 日歯大病院 総診)

キーワード:Enterococcus faecalis、病原因子、ゲノム

 Enterococcus faecalisは、感染歯髄や根尖性歯周炎の根管内から分離される菌種の一つとして知られている。近年、多剤耐性化E. faecalisによる感染症や保菌者が国内でも確認されており、口腔で常在するE. faecalisのゲノムDNAも進化してきていることが示唆される。しかし、E. faecalisのヒト口腔からの検出は1%未満と少なく、病原因子やその発現機構は十分に理解されていない。本研究では、ヒト口腔に常在するE. faecalisのゲノム塩基配列を解析し、病原因子との関連について検討を行った。
 被験者の歯面、舌背、および口腔粘膜からサンプルを採取し、MS-CAPS培地で分離後、16S rRNA遺伝子塩基配列により菌種同定を行なった。単離されたE. faecalisのゲノムは、塩基配列を読解後、系統近縁種OG1RF株を参照配列とし、Sentieon softwareを用いて比較した。バイオフィルム形成はクリスタルバイオレット法で検出し、溶血性はヒツジ血液寒天培地を用いて評価した。
 サンプルよりEnterococciを含む4種21株が単離され、そのうちE. faecalisは1株であった。単離されたE. faecalis (E203株)には、主要な病原因子である凝集、バイオフィルム、溶血性、およびゼラチナーゼ活性に関連する遺伝子が存在した。OG1RF株とのゲノム比較の結果、これらの遺伝子には多くの一塩基多型変異 (SNPs)とinsertion/ deletion変異 (indel)が認められた。しかし今回用いた条件では、E203株とOG1RF株のバイオフィルム形成に大きな差はなく、溶血性も確認されなかった。
 口腔E. faecalisのゲノムは、多様化しており、その病原因子は宿主環境に応答して厳密に発現制御されることが示唆された。