第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-16] DiGeorge症候群疾患遺伝子TBX1は口蓋形成においてmiR-200–ZEB2軸を標的にする

〇船戸 紀子1,2 (1. 医科歯科大 院医歯 シグナル遺伝子制御、2. 医科歯科大 リサーチコア)

キーワード:22q11.2欠失症候群、マイクロRNA、血管内皮増殖因子VEGFA

【目的】T-box型転写因子をコードするTBX1は、DiGeorge症候群の疾患遺伝子である。Tbx1遺伝子欠損マウスでは、口蓋裂が認められるが、その際、口蓋板上皮に増殖と分化の異常を伴う。そこで、口蓋発生におけるTBX1の役割を解明する目的で、TBX1の機能および転写制御ネットワークを解析した。
【方法】Tbx1遺伝子欠損マウスを用いて、口蓋板での遺伝子・microRNA発現解析を行った。さらに、TBX1安定発現上皮細胞株を作製し、上皮間葉転移(EMT)解析、遺伝子・タンパク・microRNA発現解析を行った。その結果をもとに、標的microRNAクラスターのプロモーターを解析の上、プロモーターアッセイによりTBX1の転写機能を解析した。
【結果】Tbx1遺伝子欠損マウス胎児の口蓋板で、EMT抑制因子 miR-200、幹細胞分化抑制因子miR-203、および標的遺伝子群の発現に異常を認めた。また、TBX1を上皮細胞に安定発現させると、miR-200とmiR-203の発現を活性化し、これらmicroRNAの共通の標的である遺伝子群の発現を阻害した。その結果、EMTや細胞移動を抑制し、上皮分化を誘導した。miR-200b/200a/429クラスターのプロモーター領域には、TBX1と転写因子ZEBの結合モチーフが重複して存在していた。そのため、ZEB2に対するTBX1の役割を確認したところ、TBX1はZEB2依存性のmiR-200b/200a/429の転写抑制を負に調節することを見出した。
【結論】TBX1がmiR-200–ZEB2軸を制御することを見出した。TBX1が口蓋形成時にmicroRNAの発現調節を通じて、口蓋発生に関わる遺伝子群を制御していることが示唆された。
(非会員共同研究者:Hiromi Yanagisawa)