第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-25] ラクトフェリンによるSARS-CoV-2疑似ウイルス感染抑制の検討

〇小林 美智代1、前田 豊信2、遊佐 淳子3、加藤 靖正2、廣瀬 公治1 (1. 奥羽大 歯 口腔衛生、2. 奥羽大 歯 口腔生化、3. 奥羽大 歯 口腔病理)

キーワード:ラクトフェリン、SARS-CoV-2疑似ウイルス、TMPRSS2

【緒言】 2019年度末から重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 (SARS-CoV-2)感染症が公衆衛生上の問題となっている。一方、ラクトフェリンは生体由来の、抗ウイルス作用のある多機能タンパクである。我々は、ウシラクトフェリン(bLF)がSARS-CoV-2の感染を抑制するかin vitroで検証を行った。
【材料と方法】 ヒト肺癌由来のA549細胞におけるTMPRSS2とACE2の過剰発現株(A549-TMPRSS2-ACE2)およびACE2のみの過剰発現株(A549-ACE2)、さらにアフリカミドリ猿の腎臓上皮細胞由来のVeroE6細胞、およびTMPRSS2過剰発現株(VeroE6-TMPRSS2)を用いて、疑似ウイルスの感染におけるbLF事前処理の効果を調べた。
【結果】 VeroE6細胞およびA549-ACE2細胞に対して、bLFは疑似ウイルスの感染を濃度依存的に抑制したが、TMPRSS2を共発現させるとbLFによる感染抑制効果は消失した。
【考察】 SARC-CoV-2が細胞内に侵入するには、まず細胞膜上のACE2と結合する必要性がある。続いて宿主のTMPRSS2によりSARS-CoV-2に発現しているSタンパク質が切断されると感染が成立するが、宿主にTMPRSS2が存在しない場合はウイルスがエンドサイトーシスによって宿主に取り込まれ、Sタンパク質がカテプシンにより切断されることで感染が成立する。従って、LFはカテプシンを介した経路に作用することで感染抑制活性を示すことが示唆された。
【非会員共同研究者】谷 英樹 (富山県衛生研究所ウイルス部)