第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月18日(月) 08:30 〜 15:50 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P3-2-01] 骨細胞Toll様受容体2-MyD88シグナルの阻害は、歯周炎における骨吸収と炎症を分離する。

〇吉本 哲也1、安藤 俊範1、吉井 寛毅 2、吉野 舞2、林 由佳1、鈴木 將之1、加治屋 幹人1 (1. 広大 病院 口腔先端治療開発、2. 広大 院医 歯周)

キーワード:骨細胞、歯周病、TLRs-MyD88シグナル

口腔内細菌は, 歯周炎における骨吸収の強力な要因である. 骨細胞はRANKLを発現して破骨細胞を活性化するため, 細菌感染と破骨細胞形成の間のセルメディエーターであると考えられる. 骨細胞が免疫細胞と同様にToll様受容体2(TLR2)とそのシグナル伝達因子であるMyD88を発現することから, 本研究では, 骨細胞TLR2-MyD88シグナルの活性が歯周炎の病態形成に与える影響を検討することを目的とした. まず骨細胞選択的にMyD88を欠失したDmp1-Cre;Myd88fl/flマウスを作製し, Pg(ATCC33277, 2x109 CFU)を1日おきに5回口腔内に播種することでPg誘発性の実験的歯周炎モデルを構築した. 最後の播種から7日目にq-PCRおよび組織形態学的測定, 42日目にマイクロCTにて解析を行った. Pg感染Dmp1-Cre;Myd88fl/flマウスでは, Myd88fl/flマウスと比較し, 顎骨におけるRankl発現の減少, 歯槽骨喪失の有意な抑制を示した一方で, 歯肉の炎症レベルには優位な差は認めなかった. また, この歯槽骨喪失は骨細胞由来のRANKLが重要であることをDmp1-Cre;Ranklfl/flマウスを用いて明らかにした. さらに, MyD88阻害剤であるT6167923を腹腔内投与すると, Pg感染野生型マウスの歯槽骨喪失は抑制されたが, 炎症のレベルには影響されなかった. Pg誘発性の実験的歯周炎モデルマウスにおいて, 骨細胞MyD88シグナルのブロックによって骨吸収と炎症が分離された. これまで歯周炎における骨破壊は, 炎症に密接に関連していると考えられてきたが, 本研究は新たな視点を提供するものである.