[P3-2-13] 象牙芽細胞において脱分極刺激は細胞内Ca2+動員を誘発する
キーワード:象牙芽細胞、Ca2+、脱分極
象牙質表面への刺激は、象牙芽細胞の機械感受性イオンチャネル活性化をもたらす結果、細胞内Ca2+シグナルを介してpannexin-1からのATP放出を誘発する。放出されたATPは象牙芽細胞間、象牙芽細胞-三叉神経節ニューロン間の細胞間伝達物質として機能し、象牙質形成や象牙質痛の発生に関与する。一方、機械感受性イオンチャネルは非選択的な陽イオンチャネルであり、活性化によりCa2+をはじめとする様々な陽イオンが流入する。陽イオン流入は細胞の脱分極をもたらすが、象牙芽細胞の脱分極で生じる細胞内Ca2+シグナルとその細胞機能に対する役割は不明である。脱分極で活性化されるCa2+チャネルのうち、象牙芽細胞ではL型・T型電位依存性Ca2+チャネルの発現が知られている。そこで、本研究はラット急性単離象牙芽細胞を用いて脱分極刺激で生じる細胞内Ca2+シグナルを検討した。新生仔ラット(7~9日齢)片側下顎骨から切歯を取り出し、歯髄スライス標本を作製した。酵素処理後、24時間の初代培養を行った。歯髄の周囲に存在する象牙芽細胞にカルシウム蛍光指示薬(fura 2-AM)を60分間負荷した後、細胞内遊離Ca2+濃度([Ca2+]i)を測定した。細胞外Ca2+存在下で、脱分極を誘発する高K+溶液(50 mM)を投与すると一過性に[Ca2+]iが増加した。細胞外Ca2+非存在下で、高K+溶液を投与すると一過性に[Ca2+]iが増加したが、その振幅は細胞外Ca2+存在下と比べて有意に小さかった。これらの結果から象牙芽細胞への脱分極刺激は細胞外からのCa2+流入とCa2+ストアからのCa2+放出を誘発することが示唆された。