[P3-2-14] 2型糖尿病モデルラットにおける歯髄内石灰化とAGEs阻害薬の相関について
キーワード:歯髄、石灰化、炎症
2型糖尿病は、口腔内においては歯周病の進行、歯髄組織における炎症、病的石灰化と関連がある。我々は糖尿病モデルラットにおいて、歯髄内の病的石灰化物の形成原因に着目し、体内で形成された糖化最終産物:Advanced Glycation End Products (以下、AGEs)が歯髄内での血流障害や細胞障害性炎症に関与していることを確認した。組織内に蓄積するAGEsに対する阻害剤についても研究が進められており、AGEs架橋分解剤である、アラゲブリウムや、AGEs受容体であるRAGEの標的薬としてFPS-ZM1が代表的なものである。今回の研究では、2型糖尿病における異所性石灰化のメカニズムに関してAGEs合成阻害および分解が歯髄内石灰化へ与える影響について検討を行った。5~11週齢のSD rat及びSDT-fatty rat (2型糖尿病ラット)に対して、AGEs阻害剤およびRAGE標的薬の投与群、非投与群を設定し、AGEs架橋分解剤については10㎎/㎏/dayのアラゲブリウムの経口投与、RAGE標的薬については1mg/kg/dayのFPS-ZM1の腹腔内投与を4週間行った。投与後ラット顎骨及び腸間膜を摘出し、マイクロCT、走査型電子顕微鏡(SEM)による形態学的評価、HE染色及びDAB染色を用いた組織学的評価を行った。形態学的評価から、糖尿病ラットにおけるAGEs阻害剤投与による石灰化率の減少を認め、投与群の歯髄内血管周囲では、AGEsの発現は抑制されていた。組織学的評価においても、糖尿病ラット阻害薬投与群の血管周囲におけるAGEsの発現は抑制されていた。血管の物性に関しても変化が起こっていることが明らかになった。以上のことから、AGE-RAGE経路に対する阻害剤は、その作用によってAGEsの発現を抑制し、歯髄における炎症反応や病的石灰化物の形成を抑制する可能性が考えられる。