第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月18日(月) 08:30 〜 15:50 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P3-2-25] ヒト口腔上皮細胞におけるDectin-1の発現と役割

〇猪俣 恵1、安部 雅世1、河瀬 泰子1、天野 滋2、坂上 宏2 (1. 明海大 歯 微生物、2. 明海大 歯科医学総合研 (M-RIO))

キーワード:Dectin-1、Candida albicans、antimicrobial peptides

ヒト口腔上皮細胞は病原体に対する重要な物理的障壁の役割を果たしている。抗原を種々の受容体を介して認識すると速やかに抗菌ペプチドやケモカインを産生し局所の防御機構を誘導する。Candida albicansは口腔常在真菌でありその細胞壁にはβグルカンが存在する。βグルカンの認識にはDectin-1が関与する。本研究ではヒト口腔上皮細胞におけるDectin-1の発現とその役割を調べた。 フローサイトメトリーによりヒト扁平上皮細胞であるHSC-2、HSC-3、HSC-4及びCa9-22のいずれにおいてもDectin-1の発現を確認した。中でも、HSC-2において最も発現が高く、次いでCa9-22において高いことがリアルタイムPCRにより分かった。βグルカンはHSC-2及びCa9-22において抗菌ペプチドであるβ-defensin-1、S100A8、 S100A9ならびにLL-37の発現を誘導した。また、インターロイキン(IL)-6、IL-8及びIL-17Fの発現を誘導した。ウェスタンブロット法にてβグルカンはDectin-1の下流のシグナル伝達分子であるSykのリン酸化を誘導した。また、p38、Akt及びNF-κBのリン酸化を誘導した。これらのリン酸化はSyk阻害剤によって抑制された。以上の結果から、常在真菌のβグルカンが露出した際には上皮細胞はDectin-1を介して認識しSykを活性化することで口腔の恒常性の維持に寄与すると考えられた。