[P3-2-30] Porphyromonas gingivalis D83T3株におけるMfa1線毛の性状解析
キーワード:Porphyromonas gingivalis、fimbriae、Mfa1
【背景】歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisはFimA線毛及びMfa1線毛を発現する.Mfa1線毛はmfaクラスターから発現するMfa1-Mfa5の5つのタンパク質より構成される.また,主要成分Mfa1をコードするmfa1遺伝子は,遺伝子配列,Mfa1の分子量及び抗原性の違いからmfa170A,mfa170Bあるいはmfa153型に大別される.今回我々は,mfa170A型に分類されるも,他のmfa170A型株とは異なる分子量のMfa1を保有するD83T3株を発見した.そこで本研究ではD83T3株におけるMfa1線毛の性状を明らかにすることを目的とした.【方法】標準株ATCC 33277株(mfa170A型)由来fimA欠損株(JI-1株)あるいはD83T3株を使用した.菌体及び培養上清からタンパク質を調製し, Mfa1の局在をウェスタンブロットにより検討した.また,イオン交換クロマトグラフィーによりMfa1線毛を精製し透過型電子顕微鏡にて観察した.さらに,Mfa2,Mfa3,Mfa4及びMfa5の発現をウェスタンブロットにより解析した.【結果】JI-1株のMfa1は主に菌体に検出されたのに対し,D83T3株では主に培養上清に検出された.JI-1株の線毛は長さ100 nmの線維として観察されたが,D83T3株では1μm以上の長さの線維として観察された.JI-1株ではMfa2が菌体に,Mfa3-5は精製線毛において明瞭に検出された.一方,D83T3株ではMfa2はわずかに検出され,Mfa3-5は検出限界以下であった.【考察】D83T3株のMfa1線毛はJI-1株とは異なる構造を呈し,その局在も異なることが示された.以上の結果から,菌株によっては同じmfa170A型であってもその性状に違いが認められる場合があることが明らかになった.