[P3-2-36] 抗菌ペプチドLL-37は歯垢中に口腔内細菌DNAを堆積させる
キーワード:LL-37、DNA-LL-37 complex、Dental plaque
多菌種バイオフィルムである歯垢は、マトリクスを産生して高度に組織化された細菌共同体を形成する。DNAはマトリクスの必須要素であるとされるが、歯垢での役割は明確ではない。LL-37は主要な抗菌ペプチドで、唾液や歯肉溝浸出液に分泌され、また歯肉上皮細胞や遊離好中球などから産生され、ホメオスタシス維持に役立つ。LL-37はカチオン性で、静電気的にDNAと結合し炎症性複合体を形成することが知られるが、歯垢での役割は不明である。本研究では、歯垢におけるLL-37と口腔細菌DNAとの相互作用の解明を目的とした。 歯垢検体の免疫染色で、LL-37はDNAとモヤ状の塊として共局在していた。In vitro実験で、LL-37は口腔細菌DNAと結合して高分子量の複合体を形成し、また複合体はDNaseに耐性を有していた。抗DNA-LL37複合体抗体を作製して歯垢検体を免疫染色すると、細菌細胞の集合体やモヤ状の塊が確認され、LL-37が溶菌後遊離したDNAと複合体を形成して拡散し堆積すると推察された。Porphyromonas gingivalis、Fusobacterium nucleatum、Prevotella intermedia、Streptococcus salivarius由来のDNAを準備し、複合体を形成させて炎症誘導能を検証すると、全ての複合体でTLR9依存的な細胞刺激性を示し、活性は同等だった。一方、TLR9依存的応答を示さない単球細胞では異なる刺激性を示し、特にNLRP3依存的ならびに非依存的なIL-1β産生能を有する複合体が存在した。S. salivariusの複合体は、炎症誘導能を有する複合体の活性に拮抗した。以上の結果から、LL-37は口腔細菌DNAと複合体を形成して歯垢中に堆積させ、また複合体を形成したDNAはこれまでに報告のない炎症誘導能を示すことが明らかになった。