[P3-3-01] Elucidation for the mechanisms of activation and inactivation of the sweet taste receptor subunit TAS1R3
Keywords:味覚、甘味受容体、Gタンパク質共役型受容体
甘味は、味覚Gタンパク質共役型受容体のTAS1R2+TAS1R3により受容される。甘味物質や甘味修飾物質に対する甘味受容体の結合サイトは決定されつつあるが、受容体がどのように活性化・不活性化されるか、その動的なメカニズムは不明なままである。そこで本研究では、分子動力学シミュレーションと甘味受容体機能解析系を用いて、推定上のGタンパク質との相互作用部位であるTAS1R3の膜貫通ドメインと人工甘味料(シクラメート)や甘味抑制物質(ギムネマ酸、ラクチゾール、サッカリン)との相互作用について調べた。受容体構造の活性化モデルと不活性化モデルの比較から、ヒトの甘味受容体に対して甘味料として働くシクラメートが、マウス受容体では甘味抑制物質として作用することが明らかになった。甘味抑制物質による受容体の不活性化過程において、細胞内側の膜貫通ヘリックスIII-VI間に形成される水素結合を安定化させる一方で、受容体の活性化過程において、人工甘味料シクラメートとの相互作用はこの水素結合を切断することが予測された。甘味受容体機能解析では、この水素結合を構成するアミノ酸残基に変異を与えると受容体機能が失われること、またその周囲のアミノ酸残基のヒト一塩基多型(R757C)は甘味感受性を低下させた。このことは、分子動力学シミュレーションの予測結果を強く支持した。以上のことから、活性化過程において、細胞膜外側に存在するTAS1R3膜貫通ドメインの結合サイトでの人工甘味料との相互作用は、結合サイトとは離れた細胞内側を不安定化させ、Gタンパク質との相互作用を進める可能性が示唆された。